『ウォッチメン』『サクセッション』等の脚本を手掛けてきたコード・ジェファーソンの初監督作品。今年度アカデミー脚色賞受賞作。
"White people think they want the truth, but they don't. They want to feel absolved."
賢く、可笑しく、思慮深い、ハイコンセプトな社会風刺"ブラック"コメディドラマ。アメリカ社会における"黒人"という虚像をテーマに、人種的ステレオタイプを白人/黒人双方の視点から盛大に皮肉っている。近年、"多様性キャンペーン"に力を入れているアカデミー賞に釘を差すかのような鋭さがあった。
スランプに陥っているアンチ"ブラックエンターテイメント"の"黒人"小説家が、悪ふざけで、現役逃亡犯の新人小説家を装い、典型的な黒人小説『Fuck』を書いたら、ベストセラー小説となり、文学賞まで受賞してしまう、、というストーリー。
"Something Real"を追求する黒人小説家ドラマ。考えさせられるトピックがいくつもあった。優秀な大学を卒業し、大手出版社に就職した"White Negro"の小説家に、貧しい黒人たちの"ソウル"が描けるのか。白人にウケる"黒人小説"を書くこと、ステレオタイプの黒人を演じることは、世間に迎合することに他ならないのではないか。"多様性キャンペーン"や「今こそ黒人の声に耳を傾けるべき。」の文言に抱く違和感の正体とは。「白人が求めているのは真実ではなく免罪符」という言葉も刺さった。
小説家ドラマと並行して、長年家族を顧みなかった男が久しぶりに家族と交流するという、どこにでもあるような家族ドラマが進行していく。天才ならではの孤独、家族の死、アルツハイマーとなった母親の介護、今は亡き父親の不倫問題、父親との不仲、姉兄弟のいざこざ、恋愛、結婚。とてもエモーショナルで胸を打つ。これこそ、"Something Real"だろう。
小説家の創造通りにキャラクターが動き出すという、小説家映画ならではの演出が視覚的に面白い。
黒人指名手配犯になりきるシーンをはじめとするジェフリー・ライトのコメディ演技や、随所で炸裂するブラックユーモアが面白くて、何度も声を出して笑ってしまった。
"Potential is what people see when what's in front of them isn't good enough."
"Geniuses are loners because they can't connect with the rest of us."
"It's essential to listen to Black voices right now."
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