真世紀

耳をかたむけての真世紀のレビュー・感想・評価

耳をかたむけて(2023年製作の映画)
3.7
今年の東京国際映画祭、鑑賞一本目。

北京の葬儀場に縁を持ち、弔文書きを仕事とする元々は脚本家志望の男。四十代を間近にしながら故郷の父母にはいまだにドラマの脚本を書いていると吹いてしまい、電話をかけている折りなど「同居人」に促されても真実は話せず。だが、その仕事ぶりには定評がある。

弔文には書き上げて依頼主からオッケーが出て入金された後に、故人の関係者からクレームが有ることも。そんな折りにはクレーム入れた親族にも応対し、改めて丁寧に話を聞き出し、自身が依頼主から聞いていなかった故人の過去や思いを知った際には、それらの橋渡しなどのアフターケアも施す。

職歴中で定型のお悔やみ記事やもう少し詳細な追悼記事書いたり、また自費出版の追悼本の編集に関わったりした経験があるもので、そんな自分の仕事との比較に思うことも有ったりで、主人公のある意味、頑固、されども細やかな仕事ぶりには感嘆。

そんな彼だけれども、自分自身の人生への向き合いかたを改めて考える契機が。というもうひとつの柱のストーリーが、ちと弱いかなぁとも思う。なお、「同居人」の件、同性パートナーなのかなとミスリードもされたな。

ちょうど近くの席には若い中国人女性の二人連れ。アート系映画を静かに観るよモードの日本人観客よりも、色々と細かな所でクスクス笑いのネイティブな彼女たちの反応に触れて、こういうのも映画祭の客席で観る醍醐味だよなと改めて感じましたわ。

スコアにはエンディングクレジットでの劇中登場猫ちゃんのメイキング映像(子猫も産んじゃうまさにメイキング!)も加点しております。
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