シバザキ

またヴィンセントは襲われるのシバザキのレビュー・感想・評価

3.8
 アイデア一発勝負系。無差別で他人に襲われまくる様になってしまったっていう設定は今までありそうで意外と観たことなかったので期待して見ました。設定が面白い映画はそのアイデアだけで最後まで突っ走って欲しい派ですが、今作はちょっと走り続ける持久力が途中で尽きてしまっているような気がしました。

 映画開始早々目を合わせたら無差別で他人に襲われてしまう現象が発生するスピード感が良かった。主人公の性格がそこそこ癪に障るのもいい味を出していて、そういう前提があってもちゃんと悲惨に映るように襲われる恐怖は描けていたと思います。襲われるシチュエーションもバリエーションがあって面白かったし、徐々にスケールが大きくなっている世間の移り変わりも不気味に描写していて好みでした。
 襲ってくる市井の人々も周りにある殺傷能力の高い道具を用いてちゃんと殺しにかかってくるのが怖すぎる。効果がかかったときにスンッ…と真顔になるのも怖いし、それを見たヴィンセントが「終わった…」みたいな顔をするのも面白い。

 設定とその描写だけで十分面白いので、それで一本突っ走っていってほしかったのですが、やっぱり作り手はそれだけでは不安になってしまうのでしょうか。やはり途中で挟まれる恋愛描写とかは蛇足に感じました。同じような現象が起こっている人同士のSNSを通したコミュニティとかはいいと思うんですけど、そもそもこんな状況になっているやつが色恋にうつうを抜かしている場合かというツッコミが先行してしまうのです。映画の長さ的に1時間前後くらいにして『ブラック・ミラー』みたいな不条理オムニバスの一編としてやったほうが収まりがよかった気がします。

 あと”目を合わせたら襲ってくる”ということに気づいたときに、当然主人公は人と目を合わせないように努力するようになるわけですが、もっとちゃんとせんかい!と思わざるを得ない。お国柄の違いもあるでしょうが、必要最低限のコミュニケーションで生活するなら別に目を合わせることはないと思うんですよ。それでもコイツは全然それをしようとしないのはどうなのよ。 
 あとサングラスかけろ。まず思いつくことだろ。別にサングラスをかけても効果がないならそれでいいんですよ。でも、そうだとしても一回サングラスをかけてみたけどダメみたいなトライをするシーンを入れるだけでこっちのモヤモヤは解消されるんだからさ。

 なんか文句が多くなっちゃいましたけど、ワンアイデアが光る不条理モノとしては別に見れないことはない出来の作品ではあるので、興味があれば観てみて損はないです。
 スタンガンやテザー銃買ったり、ゴツい犬飼い始めたときにテンション上がっちゃうヴィンセントかわいいね。
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