王冠と崑敏

Love Letterの王冠と崑敏のネタバレレビュー・内容・結末

Love Letter(1995年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「お元気ですかぁー?」

「青春18×2 君へと続く道」の中で、ジミーとアミが劇中に観に行く映画…台湾でのタイトルは「情書」…ジミーが、博子の台詞を真似て叫ぶシーンがあります!
…NISSANのセフィーロの井上陽水さんのCMじゃありません。←わかる人だけ用。

love letterを観ないと、“藤井”道人監督の青春18×2はわからない?といったレビュー動画を観たので、おかわり前に急遽サブスクで初鑑賞。主演の中山美穂さんは、私と同じ歳(彼女は早生まれなので学年は一個上)のスーパーアイドルで当時何故観にいかなかったのだろう? と疑問に思いましたが…中山忍さんの平成ガメラシリーズは何度も観てるのに…当時の記憶は殆どないです。恐らく環境が変わって毎日余裕の無い生活をしていたからでしょう。

まあ、私の事はどうでも良いのです。スミマセン。

序盤は、青春18×2と比べたり、イースターエッグ探しに集中していたんですが、いつの間にか、映画そのものに没入していきました。

三回忌法要の後に卒業アルバムの住所を頼りに、かつて彼が住んでいた北海道の小樽の既に、国道が通ってしまって存在しない筈の住所へ手紙を送る渡辺博子/中山美穂。
何故か死んだ筈の恋人・藤井樹から返信が届いてからストーリーが動き出します。

死んだ恋人の事を吹っ切れず、その恋人の友人だった秋葉からアプローチを受けている博子が心の整理をつけるまで。その博子との手紙のやり取りで当時を思い出し、衝撃の事実を樹が知る事になるのが、この映画の大筋です。

死んだ恋人から返信が届くなんてあり得ないと、通常は思います。チャラい郵便局員が藤井樹/中山美穂(二役)の所へ郵便を届けに来るシーン、ははーん、コイツの誤配が原因かと思ったら、そもそも卒業アルバムの住所の転記の際に、藤井樹/柏原崇の住所ではなく藤井樹/中山美穂の住所を書いてしまっていた渡辺博子の間違いで物語は始まっていたのでした。郵便屋さん、ごめんなさい(笑)

まあ、まさか同姓同名が同じクラスに男女で在籍していたなんて普通は思わないし、それを思い付いてプロットとして脚本にした岩井俊二監督のアイデアの勝利ですね。

市川崑監督のドキュメンタリー映画を撮っている岩井俊二監督ですが、市川崑的に言えば「恐ろしい(くはないですが)偶然が何度も重なった」という事でしょう。風邪を引いて紙包みの薬を飲む時にクシャミをして薬が宙を舞うシーンは、金田一耕助シリーズの等々力警部オマージュでしょう。きっと。

渡辺博子と藤井樹の手紙のやり取りが、時間軸と空間軸を見事に移動して物語を綴っていきます。博子は恋人だった樹と決別する旅、樹は中学時代の思い出を巡り事実を知る旅。記憶は変わっていきます。
2人が1度ニアミスしますが、私は、最後に2人が会うモノだと思っていたのでどうやったら劇的か?と考えていましたが、そうはならないのでした。映画として全体を観ている観客が理解している事と、博子と樹がそれぞれ知っている情報は異なるのです。それがこの映画の良さでもありますね。

只、博子が樹を好きになった理由を中学時代のW藤井樹のエピソードから計り知るというのは私には至難の業でした。逆に樹が博子に一目ぼれしたのは中学時代の初恋の人の幻影を追いかけ続けていたからなら、あまり魅力的なキャラクターでは無い気がしてしまいます。また、豊川悦司さん演じる秋葉も魅力的なキャラクターには思えませんでした。女性目線だと違うのでしょうか?どこに藤井樹が惚れたのかわからないのがモヤモヤして、それが日に日に大きくなっております。人を好きになるのに明確な理由なんて無いのかな?自分の好きな恋愛映画では、相手を好きになった理由が観客に共感出来るように、描写されているので。

そして、人間の致死率が100%を下回らない限り必ず訪れる大切な人との別れ。そこを物語のキーに据えるのは狡いですね。仕方ないことですが。アンサー映画とされるラストレターも冒頭、葬儀シーンなので、ちょっとしんどくて鑑賞保留してます。

最後に、スコア5.0でも良かったのですが、樹と秋葉のキスシーンは不要だなと思いましたので、-1.0致しました。

「私は元気です!!」
王冠と崑敏

王冠と崑敏