しろくま

鉄道員(ぽっぽや)のしろくまのレビュー・感想・評価

鉄道員(ぽっぽや)(1999年製作の映画)
3.7
《北海道幌舞線》
老いた駅長は、粉雪の降りしきる終着駅のホームに立っていた。〝6分遅れなのに乙松さん、ずっと立ってたんだ。外は零下10度以下だべ。かっこいいよなあ。絵になるよな。あれがぽっぽやだな〟

かつては炭鉱でにぎわっていた幌舞駅も乗客はめっきり減り、廃線になることが決まっていた。長年鉄道員(ぽっぽや)として従事していた乙松(高倉健)ももうすぐ定年を迎える。同僚の仙次(小林稔)や仙次の息子の秀男(吉岡秀隆)が乙松の再就職先を世話しようとしているのに気にも留めていない様子で…。

年末から新年を迎える最果ての終着駅での駅長乙松のお仕事ムービーだけど…。それってNHKの〝ドキュメント72時間〟のようにそこで起きる様々な人間模様が描かれるのかと思ったら、乗り降りする乗客もほとんどいないので、ほぼほぼ回想シーンだけど、家族の歴史、同僚や地域の人とのかかわりが分かって興味深い。

ただ、幼かった一人娘の雪子、そして妻の静枝(大竹しのぶ)が亡くなった日も仕事をこなし、駅のホームに立ち続けていたって職場環境悪すぎでしょ。家族の一大事の時だったら普通休みをもらうことだってできると思うけど、一人で勤務している仕事場だと、交代要員が来ないと休めないってのって辛すぎるね。

本作では、駅舎を訪れる女の子たちとの交流が描かれている。きっと正月休みで里帰りでやってきた子だと思ったら…。彼女たちの正体を最後に知らせて驚かせるのではなく途中で分かるように描かれているので、全てが切なくて泣けてくるね。二人目の女の子のあれは反則技だし、三人目の女子高生の広末涼子さんは〝マジで恋する5秒前〟の透明感。

まるで、あのアンデルセンの童話のようなラストだけど、乙松にとっては夢のような奇跡の瞬間だったんだろうね。流石ストーリー・テラーの浅田次郎さんの作品。

視聴メモ:2023.11.04/166/図書館🅼DVD
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