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老人と海のmayumayuのレビュー・感想・評価

老人と海(1958年製作の映画)
3.4
”なぜあんな繊細な鳥が海にいるのか。海は優しく美しいが残酷な時もあるのに”

原作は20年くらい前に既読。ヘミングウェイ、読んでみるかくらいの感じで手に取った。
薄い文庫本、少ない登場人物、とてもとてもシンプルなストーリー。
でもなんだか良い、と感じた。何がいいと自分が感じたのか当時はよくわからなかった。
ただなんとなく、良かった、と思った。
映画化作品はこれが初めて。これを見て、なぜ当時自分がこの原作が良いと思ったかがわかった気がした。

そもそもの原作が、海で一人漁をする老人が大きな獲物と対峙する部分が大部分なので、
ほぼ一人芝居の部分がほとんど。
なぜかフィルマでドキュメンタリーに区分されているようですが、ドキュメンタリーではありません。
原作の映像付きの朗読‥または登場人物の少ない舞台作品に近いような映画です。
海の映像はなかなか美しいですが、何しろ古いので、合成の縁取りがよくわかってしまうし、鮫や魚の映像は同じ部分を繰り返し繋いでいるのもわかってしまいますね。
映画としての出来は私には評価できません。
原作のスピリットがとてもよく再現できているように思うので、個人的な思いの点数です。
以下ネタバレあります。











ストーリーは本当にシンプル。
海辺の町で暮らす老人。妻を亡くし、孤独だがある少年だけが慕ってくれる。
84日間不漁だったが、大きな当たりを引く。
そのまま3日間の魚との対峙のうえ、浜へ帰ってくるが、
大きな魚は鮫に嗅ぎつけられ、帰り着いた時には骨だけになってしまった。
疲れ切った老人を少年が迎える。
本当にこれだけ。大半が魚との老人の対話。
老人役のスペンサー・トレイシーは当時58歳くらいのはずですが、役作りなのかもう少し年上に見えますね。初めて拝見しましたが味のある良い俳優さんにお見受けします。
この物語が胸を打つのは、きっと老人が魚を、自然をリスペクトしているからだと思います。
老人は魚をただの獲物ではなく、1対1の戦う相手として対峙しています。
おそらく自然の中に生きる生き物としての自分を、美しいが優しいだけでない海を通してよく知っている。
また昔の漁なので、リールなどはありません。あるのは針と糸。糸を引き上げるのは自分の手というシンプルさ。3日間糸を素手で引きながら、他の糸でとった魚を片手でさばいて食しながらの漁。魚との戦いは己との戦いでもあって、老人の一人語りとナレーションでそれが表されます。その印象は全く原作通り。
相手を侮ることなく、自分を卑下することもなくやるべきことをする。
それを慕う少年。短めの映画なので、原作に興味がある方は一見しても良いかもしれません。
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