カウリスマキからコメディ感とセンスを薄めたようなウルグアイ作品。
無口で無感情、気の利かない靴下工場の経営社ハコボとその社員のマルタが、ハコボの弟の訪問をきっかけに数日間だけ偽装夫婦を装う…
経営社のハコボと社員のマルタは、恐らく何十年もこのオンボロな小さな靴下工場で変わり映えのない毎日を送ってきたのであろう。妻役を引き受けたマルタは美容院へ行き、化粧をする。そんなマルタの変化に気づきもしないダメ男のハコボ。数日間の偽装夫婦の生活でマルタの心情は変化していく。
明るい成功者の弟と暗くてパッとしない兄、同じ靴下工場を経営しながら、その差が売上に出ているのが何とも切ない。兄は卑屈になり、プライドは捨てられずにいる痛さがヒシヒシと伝わる。
タイトルの「ウィスキー」とは日本で写真を撮る際に言う「チーズ」と同じ。兄は写真を撮る時に作り笑いをしたきりで、それ以外に笑うことはなかった。
彼の人生に何が起こり、なぜそんなに無感情になってしまったのか答えはどこにもない。ただ突き放すようなラストで、明日も明後日もハコボの孤独な生活は続いていくのだろうと想像させられる。
こびりつくような寂しさが印象的な作品だったのだけど、監督はこの2年後に自死したなだそう。
*のんchanありがとう*