Omizu

赫い髪の女のOmizuのレビュー・感想・評価

赫い髪の女(1979年製作の映画)
3.7
【1979年キネマ旬報日本映画ベストテン 第4位】
『一条さゆり 濡れた欲情』などのロマン・ポルノの巨匠、神代辰巳監督が手掛けた作品。中上健次の「赫髪」をもとに荒井晴彦が脚色している。

日活ロマン・ポルノというものにそもそもあまり興味はなく、これまでみたロマン・ポルノでそこまでいいと思う作品はなかったがこれはいいかも。

もちろん冒頭で女性がレイプされるなど今だったらコンプライアンス的にムリだろうという描写はあるし、女性の扱いへの至らなさは存分にある。

しかしそれ以上に宮下順子演じる「赫い髪の女」への詩情あふれる描写が光っていた。終わらせ方がどうも投げやりなようにも思えるが、彼女の境遇や置かれた環境を丁寧に捉えた神代監督の演出手腕が一番発揮されていると思う。

歌との掛け合わせ方も上手く、状況とキャラクターをよく捉えている。彼女を描くことで閉鎖的で暴力的な田舎の漁村をよく描写している。

神代作品では『一条さゆり 濡れた欲情』と『四畳半襖の裏張り』くらいしか観ていないがこれが今のところのベストかも。他の作品はやや全体的に過剰に思えてしまったが、本作はちょうどいい。

演技も演出もほどよく引いているというのかな。いい意味で小綺麗にまとめていて統一感があるというのかな。いかにも「日活ロマン・ポルノ」ではないところに美点があるというか。もちろん激しい性描写などいかにもというところはあれど適度でよかった。

今も田舎でこういった人たちが生きている。そう感じられるようなリアリティーがある。今もきっと「赫い髪の女」はどこかにいるのだ。
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