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それでも恋するバルセロナのtakのレビュー・感想・評価

それでも恋するバルセロナ(2008年製作の映画)
4.1
ウディ先生の本作はスペインが舞台。恋する男女のドタバタ劇を明るく描いてくれるのか思っていた。僕の期待は裏切られる。この映画は、ウディ先生の恋愛論を意外にも真剣に描いたラブストーリー。

ヴィッキーとクリスティーナが旅行で訪れたスペイン。ヴィッキーは婚約者がいる身で、結婚を目前にひかえていた。クリスティーナは危険な恋に走るタイプ。バルセロナで出会った画家にクリスティーナはたちまち夢中になっていく。だが、ヴィッキーも一夜の出来事から彼を忘れられなくなっていく。そこに彼の元妻が現れて、不思議な四角関係が形づくられていく。

男と女が惹かれ合うのは、避けることのできない感情。ヴィッキーは、彼への感情を押し殺して初めに望んだ結婚をする。人は秘めた思いを隠して日々を過ごしている。アレン監督はそう言いたげだ。劇中、ヒッチコックの「疑惑の影」が挿入される。一見誠実そうに見える人物が実は…ってお話だけに、秘めた感情は激しいものだと言いたげだ。そういえば「マッチポイント」の結末も、幸せそうに見える結婚の影で主人公は重い秘密を抱えて生きていくことになる。

「結婚って何なんだろ。」
映画館を出て、思わず口に出た素直な感想はそれだった。映画が終わって、恋愛のあり方を考えるなんて、パトリス・ルコント映画を観た後みたいだ。

自分が望まないものがわかっている女と、自分が望むものがわからない女。対比して描かれているようでありながら、結局同じ男性をめぐる恋の騒動になっていく。恋って、いや人を恋しく思うことって、ままならぬものなのね。不満そうな表情でアメリカに帰国した二人の表情を見ると、そう思えてならない。

ところで、この映画でオスカーを獲得したのが画家の元妻を演じたペネロペ・クルス。激しすぎる性格からトラブルを起こす女性だが、それは彼を愛しているからだし、自分の思いに素直でいるからこそ。ペネロペが出てくるだけで、銀幕がキリッと締まる。あ、ひいき目はもちろんあるでしょうけど。
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