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羅生門のmayumayuのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.4
力強い。今見ても心に訴えかけてくるものがある。
三船敏郎さんてこういう人なのか。野性味あふれて、豪放磊落かと思えばキョトンとした表情などくるくると変わり、なるほど魅力的だ。
よく知らなかったのですが、話の中身は「藪の中」なんですね。場と要素に「羅生門」が出てくる。確かに、あの下人は「羅生門」の下人のように思える。
登場人物も場面セット数も少ないが、十分。ちょっと舞台を見ているような感じも。藪の中、をこのようなラストに持っていくとは。原作につけ加えると蛇足に感じることもよく経験するが、これはいいと思った。
あと、森雅之って有島武郎の息子さんなんですね!びっくり。
以下ネタバレになりそうな感想を書いていきます。








・藪の中、を私が読むと、3人の言い分は全て矛盾しているし、皆自分が殺したといいながら他を貶めたり自分をあげたりしているような気がする。でも芥川龍之介のムダのない文章で書かれると、それぞれ納得してしまって、「で?」となっていた。
映画を見て、「皆手前勝手」エゴイズム、と言われるのがちょっとわかった気がした。皆ありそうもない話をして、自分が主人公の筋書きにしている。映画オリジナルの杣人の話が一番ありそうな話だ。
・荒廃した京都、社会不安が広がり誰もが余裕を無くしている、羅生門の下人は、「お前も盗んでいる、生活の為に仕方ないと言うなら、俺がお前の物を奪っても仕方ないよな?」というひとだ。今羅生門を読んでも非常に居心地の悪い思いがする。下人の思想は現代にも存在するからだ。この下人は、杣人の偽善を鋭く指摘する。杣人はこたえる術を持たない。しかし、杣人が最後にする行動によって、この映画のラストが変わるのだ。人間は弱い悪い面もあるが、善良さも持ち合わせていると。
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