ぶみ

ソウルメイト/七月と安生のぶみのレビュー・感想・評価

ソウルメイト/七月と安生(2016年製作の映画)
4.0
大好きで、大嫌いで、私の全てだったあなたに。

アニー・ベイビーが上梓した同名短編小説を、デレク・ツァン監督、チョウ・ドンユイ、マー・スーチュン主演により映像化した中国、香港製作のドラマ。
映画会社から、人気ネット小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映像化したいという話を受けたアンシェンが、チーユエとの間に何があったかを回想する姿を描く。
原作は未読。
主人公となるアンシェンをドンユイ、チーユエをスーチュンが演じているほか、二人の間で揺れ動く青年ジアミンをトビー・リーが演じている。
物語は、チーユエが書いたとされる小説を映像化したい映画会社が、チーユエを捜したところ、所在不明であったことから、小説のもう一人の主人公であるアンシェンを見つけ出し、彼女に連絡をしてきたシーンでスタート、以降、アンシェンが中学校でチーユエと出会ってから、今に至るまでに何があったかを回想するというスタイルで進行。
まず、何より面白いのは、アンシェンは母子家庭の自由奔放な娘、チーユエは裕福な家庭の真面目な子と、ビジュアルも含めて、全てにおいて対照的なのだが、高校、大学、そして社会人と進むにつれ、お互い何を考えていたのかが徐々に明かされ、最終的には、どれが二人の本当の姿なのかわからなくなってしまうのに加え、そこに二人が好きになるジアミンが絡んでくることから、三角関係が生じるため、三人の微妙な恋の駆け引きを楽しめる仕上がりとなっている。
そして、本作品の最大のポイントは、物語自体が所謂信頼できない語り手であるアンシェン視点で進行しているため、世に出ている小説の内容が、実際に起きていたことなのか、はたまた、小説は一体誰が書いているのかが徐々に疑問として湧き上がってくることであり、それが明かされていく終盤の展開の巧みさに舌を巻くこととなる。
また、アンシェンを演じたドンユイは、森山未來と酒井美紀を、チーユエを演じたスーチュンは、misonoと西内まりやを足して二で割ったようなビジュアルであり、日本版リメイクのキャストを考えたところ、アンシェン役として玉城ティナか菜々緒、チーユエ役として長澤まさみか高畑充希が浮かんできた次第。
三角関係が物語の核となっており、やっていることは結構ドロドロなのだが、時折爽やかな一陣の風が吹いているような空気感であることから、日本のメロドラマのような重苦しさは皆無であり、三人の男女が繰り広げる恋愛模様と、少女から大人になっていく成長譚を楽しむことができるとともに、変化球を駆使したような構成により、徐々に真相が明かされていくミステリとしても上出来な良作。

相手の影を踏めば、一生離れない。
ぶみ

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