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犬王のmayumayuのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
原作と異なるラストに救われる思いだった。制作者の、犬王と友魚、原作、芸術へのリスペクトにあふれた映画だった。

アブちゃん(娘から以前教えてもらって知ってた)と森山未來がアニメで声をやると知った時点でもう見ようと思っていました。フィルマでちらほら「話が難しい」とみたため、原作読んでから観に行きました。結果的に自分としては大正解だったと思う。
足利義満、室町幕府南北朝時代。めしいた琵琶法師友魚と天才猿楽師犬王。2人の出会いと、呪いが関わる彼らの人生、その才能が作る芸術。2人とも子ども時代が壮絶ですし、一方は非業の最期を遂げるのですが、原作も本作も生きるエネルギーに満ち溢れてどこかカラっとしています。
原作読んでからだと、何をアニメで表しているかがわかりましたし、確かに聞き取りにくそうな歌詞も何を言ってるか大体わかるし、原作で「記録は全く残されていない」とされる猿楽のステージ3つがたっぷり映画で描写されるので、原作先行結構おすすめです。
キラキラしていない、どこか淡かったりくすみがかった色彩が美しいアニメーション、ロックな2人の音楽が楽しめます。以下ネタバレ。









アブちゃんの声はやはり素晴らしいですね。父の芸への妄執のために多大な犠牲を払わされ生まれてきますが、生きようとする力が強くカラリと明るい犬王に合っていました。呪われ避けられる身体も、どこかコミカルで可愛らしく感じるキャラクターデザインだと思いました。最後全ての呪いが祓われ直面を見せるのですが、かなり美しい設定だし、この話の後女形をやるので、観音様のような中性的な顔をイメージしていたんですけど、かなり男性的でびっくりしました。
森山未來の友魚はアブちゃん(と比較するのは酷だけど)と比べると声が通らないと感じてしまいました。好きな役者さんのため個人的わがままだと思いますが、アニメではなくて、実際の彼の演技や舞が観たいとつい思ってしまいました。でも、最後の哀しみ、怒り、そこからの解放の演技は素敵でした。ただ、私もアブちゃんと森山未來が観たくて観たし、作品に多大な影響を与えていそうなので、他の人はありえない役だったのかなと思いました。
犬王の父。幸せをかなぐり捨てて芸へ打ち込む(いわゆる破滅型とでも言うのでしょうか)芸術家を津田健次郎さんがされてました。相変わらず声が渋い❤️
友魚の父はどこか可愛らしくて。まさかあの方が声を当てているとは。

犬王の、大人気だったにも関わらず詳細が全く伝わっていないステージは、素晴らしく、見どころではあるのですがかなり長いため、映画としての構成バランスを悪くしているな、と感じました。でも、これが描きたくて映画化したような気もするし難しいところ‥ロック!ロックでした😊

亡霊より、権力や政治的な力による冷酷な仕打ちが恐ろしかった‥😭
友魚の非業の死。原作読んでかなり悲しく思っていたため、最後バディが見つけ出してくれてすごく嬉しかった。いいラストでした。
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