しろくま

夏への扉 ―キミのいる未来へ―のしろくまのレビュー・感想・評価

3.5
《コールドスリープという手があった》
〝僕の人生を踏みにじった連中を完全に遮断してしまうことができる。ままならぬ世間に一時おさらばして新世界で再び目を覚ます。今よりずっとましな世界になっている筈だ〟

冷凍睡眠(コールドスリープ)の映画と言えば、お勧めは1992年公開の〝フォーエヴァー・ヤング/時を超えた告白〟だね。最愛の彼女が交通事故で意識不明になったショックから立ち直れないパイロット(メル・ギブソン)が冷凍睡眠の実験台を希望するという現実逃避の展開は、本作とよく似ている。

タイムマシンで時をさかのぼって最悪の事態を回避しようとするっていう展開も〝バック・トウ・ザ・フューチャー〟とよく似ているので、2021年公開の本作がパクったと思われがちだけど、本作は、SF界の巨匠ロバート・A・ハインラインが、今から60年以上前の1956年に発表した〝夏への扉(The Door into Summer)〟が原作で、あの当時にコールドスリープとタイムマシンの合わせ技を考えていたって凄すぎる。影響を受けたのは〝フォーエヴァー・ヤング〟や〝バック・トウ・ザ・フューチャー〟の方かもね。

原作本は、お勧めのSFランキングでは常に上位の作品なのに、これまでハリウッドで映画化されなかったのは謎だけど、やっと三木孝浩監督が映画化。三木孝浩監督が映画に目覚めたきっかけが大林宣彦監督の〝時をかける少女〟(1983年)で、本作の脚本を手掛けた菅野友恵さんは、2010年の〝時をかける少女〟の脚本家さん。本作も〝時をかける〟素敵な映画に仕上がっているね。

視聴メモ:2023.07.27/107/図書館DVD
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