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流浪の月のmayumayuのネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

体調もメンタルもまずまず、月曜は久々の休み。ということで重めなのはわかって見てきた。土曜に家でシカゴを見て、日曜にこれを見る節操ないチョイス。
そして、やっぱり心から出ていかない、ずっと。ふと考えてしまう。この映画を。
だから一回レビューにまとめる。

見ている間、ずっと息苦しかった。
前半はヒロインの心情にかなりシンクロして見ていた。
ファミレスでバイトして、恋人と過ごす。若い女性のいわゆる普通の日常。
息苦しい。ずっとずっと。ありのままでいられない。曖昧な笑い。
時折はさまれる過去エピソードの彼女が生き生きのびのびしている。
「恋愛感情はなぜ一人の人間だけに向けられ、他の人間では駄目なのか。なぜ一人の人間だけにひかれるのか。それは神秘だよ」と宮部みゆきはある本で登場人物に言わせている。
なんとなくそれを思い出した。
理由なんてないけど、恋じゃないかもしれないけど、もうその人のそばでしか息ができない。本当の自分でいられない。ただただそういうことなんだろう。
それに気づいてからのヒロインは強くてびっくりする。
「私はあなたに何を許されなくてはならないの?」
一人で生きていく自信もなかった彼女はたぶん覚醒した。

立場ゆえにどんどん追い詰められていく二人。それもまた辛くて、映画の間、すごく変な汗をかいていた。

原作は未読。試し読みをちらっと見たが、読まないかもしれない。
奔放な母親とそれを愛し早く亡くなった父親。魅力的な3人の暮らし。
彼女はたぶん母のことも嫌いじゃないんだろう。でも、彼女をあの状況に追いやった母親にきっと私は腹を立ててしまう。そういう映画じゃない気がする。
お互い、その相手じゃないと息ができないのだ、たぶん。

広瀬すずは娘と一緒にちはやふる、やチアダン、や一度死んでみたとかしか見ていなかったので‥遅いかもしれないが全く違う演技を見た。もう24歳になるところか‥
松坂桃李は‥すごかった。表情が大きくない役なのだが、静かなのか、狂気なのか、でも優しさも感じられて‥
多部未華子扮する相手の女性に、「ああそうだよ」と投げやりに答えるところの瞳の真っ暗さといったらなかった。
たぶんあの時、握った手を離したくなかったんだろう。あとで煮える思いで反芻したのかも。だから2度目は激しく抵抗したんだ。
水に入った時は、きっと月を見て死ねなかったんだ。
横浜流星の役も‥傷ついている。愛に飢えている。喪失を常に恐れている。不安な役。どこかで、自分のことを本当に好きじゃないんじゃないかと無意識に感じていたかもしれない。確かめるために、支配するために、安堵を得たいために、性的に求めるのかもしれない。傷を負っているからといって暴力をふるっていいわけではないが。こういう役をするのは初めて見たが、今後も楽しみな好きな役者さんだ。
子役の白鳥玉季さんの演技も素晴らしかった。過去パートの輝きと切なさ。

もう一回は見ないかもしれない。家だったら全部見切れなかったかも。映画館で見られてよかった。俳優は、本当に命を削って演技をするんだろうなと思う。俳優さんの演技で+0.5。

※全然関係ないが、あの足漕ぎスワンボートのシーンは洗足池だ。
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