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パワー・オブ・ザ・ドッグのmayumayuのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
3.8
観てる途中はあんまり楽しくも面白くもない。観た後すぐは‥衝撃を少しくらう。その後じわじわ色々考える。そして忘れがたい。

1920年代。美しく、広く、人の営みのはるか彼方に存在していそうなモンタナの壮大な景色。それと対比されるような、ざらついた、どうしようもなく、行き場のない、人間の想いや営み。
そんな映画でした。
カンバーバッチって性格が良くない役が多いよね。空気読まない探偵や、金が好きな竜、腕を鼻にかけた脳外科医。でも嫌いになれない。そこがいいのかな。
私のように何も情報入れずに観た方がいいと思うので、内容に触れる事は以下に間を空けて書きます。














フィルことカンバーバッチ。大学を出てラテン語を嗜むインテリ。しかし自分のある事を隠し抑圧して生きている。その反動なのか、ホモソーシャルな居場所を作り上げ、社交や整容を遠ざけている。彼の愛する弟は、あまりその場が居心地良くない。兄は弟を愛しているが、弟が感じられるような親愛の情を示す術は持っていない。しかしその弟も、優しいようでいて、妻の孤独や不安には寄り添えず、慣れない社交やピアノ演奏を押しつける。頭の良い兄は、義妹の不安を嗅ぎ取り、攻撃する。アルコール依存になる義妹。
痛いところをつくのが天才的に上手い人‥そして孤高の人。
前半その描写が続き、かなり不快。
ありのままに生きられない時代、満たされない想い、渇き。そんな人が久しぶりに分かり合えるかもしれない人を見つけたら、無防備になってしまうのだろう。
カンバーバッチだから、ミスリードされたと思う。いい関係を築いていくのかと。
でも、「あなたに憧れてて」というセリフに?と思った。あれは性癖だろう。いくら医学を学んでいても、ほんの短い間でも可愛がったウサギを家でとか、牛の遺体を発見後の行動はいわゆる普通ではないだろう。病的に細い身体。命を奪うことへの壁が低いのか。
タバコを吸いながら光る目。最後の笑み、やられたと思った。
主要4人を始め、俳優の演技すごかった。
ホモソーシャルとか、ミソジニーとか、ちゃんと調べるきっかけになった。
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