Ryan

ヴェラは海の夢を見るのRyanのレビュー・感想・評価

ヴェラは海の夢を見る(2021年製作の映画)
3.6
コソボの新鋭カルトリナ・クラスニチ



ストーリー
手話通訳をしているヴェラの、裁判官の夫が自殺する。田舎に持て余していた家が、高速道路の建設予定地になって売れそうだと喜んだばかり。ぼうぜんとするヴェラの元に田舎の隣人が訪ねてきて「家を譲られる約束をした」と明かすが…。


監督 カルトリナ・クラスニチ


第34回東京国際映画祭コンペティション部門最高賞の東京グランプリ受賞作品。

この物語をどう捉えるかは見た人次第。
不幸なのか?幸せなのか?このラストにあなたはどう思う?

人間のクズの部分が赤裸々に描かれる。
しかし、その人間の"クズ"の部分だと思っていたのはもしかしたら男性優位社会そのものなのかもしれない。
そう訴える力がこの映画にはある。
抑圧への怒りと理不尽にあらがう女性の姿を通して男性社会の中心をあぶりだす。

泥臭く陰湿だが、映像と音楽で叙情的である。
とても難しい問題だ。
現実で確実にある内容であり、これを分岐点と捉えるか遺物と捉えるかは価値観によるだろう。
劇中の音楽の歌詞で興味深いものがあった。
「哀れなのは、昔の若かった頃を悲しい気持ちで思い出す事」
主人公ヴェラがこの物語をどう完結させるのか?これまでの彼女の生い立ちとこれからの問題はどうするのか?
それを踏まえて、どんな結末を迎えるのかは観てのお楽しみだ。
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