Brynhildr38

デューン 砂の惑星PART2のBrynhildr38のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
「これは、面白いのか?」

前作のPART1で惑星アラキスをめぐる宇宙戦争が勃発!ハルコンネン家の陰謀によりアトレイデス家は全滅。しかし、最愛の父とすべてを失うも、王子ポールは生きていた。ついに復讐の時。運命の女性砂漠の民チャニとポールの全宇宙を巻き込む最終決戦が始まる。(あらすじより)

ストーリーは、登場人物の思惑が絡む複雑なものに見えますが、1960年代のアラブ・イスラム世界と西欧の対立がモデルになっていて、ポールが砂漠の民フレーメンの心をつかみ、やがて崇められるまでの経緯、母の秘密、皇帝の陰謀、秘密結社ベネ・ゲセリットの暗躍、ハルコンネン家の企みなど、権謀術数渦巻く争いを描いていて、イスラム色がとっても強い。

PART2作品だからと言うわけではないですが復習は必須。前作未鑑賞では独特な世界観や分かり難い人間関係など、情報量の多さに撃沈してしまうかも。特にフレーメンの独特の用語・慣習、ベネ・ゲセリットの目的などは事前事後のリサーチが必須かと思います。

舞台は、人類が地球以外の惑星に移住している遠い未来(西暦10,190年)とありますが、精密なアンドロイドやAIは出てきません。映画では説明が省かれていますが、原作では人工知能に奴隷化された過去を反省した人類は、「考える能力を持つ機械」を禁ずるという極端な行動を取り、精神と肉体を訓練する二大教育機関としてベネ・ゲセリットと航宙ギルドを設けて社会を運営し、繁栄の道を歩みだしているという説明があります。だからこそ人間の能力を覚醒することが可能なスパイス(メランジ)がとても貴重な物質になっていると。この部分の説明が端折られるとスパイス(メランジ)の希少性かつ特異性が伝わらず、なぜ皇帝がアラキスにこだわるのかが分かりにくいのではないかと思います。

作品全体は、エンターテインメント性、わかりやすいSFアクション物を期待している人には恐らく低評価になるかと。しかしながら原作既読派の私としては、これほど原作を大事にしてくれて、そのイメージを取り込んでくれたことに鑑賞中ずっと胸熱でした。ところどころで、いかにこの「デューン/砂の惑星」が後世の名作と言われる「スター・ウォーズ」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」などに影響を与えたかを示唆するようなシーンがあります。それらが後世の名作に負けないレベルで描かれていることがとても嬉しい。

主なキャストについて
主人公のアトレイデス家の王子ポールを演じるティモシー・シャラメは、その美しい顔立ちの中に憂いある青い目力とともに救世主として逞しく変貌を遂げていく姿を期待以上に凛々しく演じている。主人公ポールを支えるキャラクターとして活躍するのが砂漠の民で戦士のチャニを演じるゼンデイヤ。あまりにも早く事態が動いていくことに戸惑いつつも伝説には踊らされず後半ずっと眉間に皺よせていますがそれでもセクシーキュート。ポールの宿敵ハルコンネン男爵の甥で血に飢えた狂戦士フェイド=ラウサを怪演したオースティン・バトラーが、映画「エルヴィス」でプレスリーを演じた人と後で知って仰け反りました。スキンヘッドが似合いすぎ。皇帝の娘イルーラン・コリノを演じるフローレンス・ピューは、同時期に公開されたクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」にも出演。どちらの監督もやたらとピュー姉さんのドアップ撮りたがるのは頷ける。

レビュー冒頭の問いに対して、
「私は好き・・・」
フランク・ハーバートの原作に想像力を刺激され、ヴィルヌーヴ監督の映像美に浸り、ハンス・ジマーの音楽に揺さぶられました。

※ネタばれはコメント欄で
Brynhildr38

Brynhildr38