浅野公喜

ふしぎの海のナディアの浅野公喜のレビュー・感想・評価

ふしぎの海のナディア(1990年製作のアニメ)
4.2
言わずと知れた庵野監督がエヴァより前に手掛けていた作品。ストーリー終盤の時期に生まれた為完全なリアルタイムではないものの、子供の頃BSの衛星アニメ劇場で何度か再放送していたのを断片的に観たり、小学校の図書室にアニメ絵本が置いてたりと割と思い入れが有ります。エヴァもそれなりに楽しみましたが、ストレートなエンタテイメントとして楽しめる点ではこちらの方が今となっては好きな作品かもしれません。

今観るとやはりエヴァに通じる一部世界観やメカの描写が散見されますが、発明家でナード寄りなジャンとヒロインには珍しい褐色且つ身勝手な性格?のナディアという組み合わせは当時も現在もかなり斬新で、ナディアに注目が行きがちなものの、失敗こそ多いが好奇心旺盛、勇敢で素直、そしてサバイバル生活もなんのそのなジャンが物語に牽引力を持ってる気がします。そして科学に肯定的なジャン、それに懐疑的なナディアが物語の軸になることで科学の強さと弱さ、そして時にそれを凌駕する人間の強さと愚かさが圧倒的なスケールで描かれ、最終的にそれらひっくるめた人間讃歌に帰着するのが魅力でしょうか。

彼らと行動を共にする「ブルースブラザーズ」+女ボスなグランディス一味、そしてマリー(やキング)はコミカルな役どころが多いですが、時に二人にはない冷静で大人な意見を言ったり行動を見せ、子供のマリーでさえ冴えた発言をするのがギャップ有って印象的。

蛇足と言われがちな無人島編も、その粗い作画こそ気になりますが個人的には自分の趣味に没頭しがちなジャン、喧嘩ばかりするサンソン&ハンソンに対し愚痴を言うナディア達には男性と女性の違いが浮き彫りになっているようでちょっと興味深い部分。

自動ドアに内線電話内蔵のノーチラス号をはじめとするメカや一部ロボは19世紀が舞台にしては余りに先進的過ぎて20世紀どころか21世紀のものにも見える所から、この作品内の世界では19世紀が「現代」なのかなと勝手に考えてしまいました(意味不明)。

印象的なのは言わずもがな15話、「マタンゴ」よろしくなジャンが観れる25話、好きな演出は6話で崖っぷちで花を摘むマリーが捕まった際直接捕まる所を見せずに崖から花が散らばって落ちるのを崖下のアングルから見せる所。また、「スターウォーズ」の帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)にも匹敵するネオアトランティスのテーマはもし自分がコントをやるなら使いたい位好きなBGMとなりました(笑)。色白に価値を置かれる世の中ですが、褐色の女性も魅力的に感じるようになったのはナディアの影響なんでしょうかね。
浅野公喜

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