浅野公喜

夜廻り猫の浅野公喜のレビュー・感想・評価

夜廻り猫(2023年製作のアニメ)
4.0
貫禄ある猫の平蔵と子猫の重郎が夜な夜な様々な人のもとに訪れる深谷かほる原作の8コママンガ原作のショートアニメ。平蔵の声はタカユキ・ヤマダで原作の絵柄や雰囲気を尊重した素朴な作画が特徴。

登場する人々は時に不器用で世の中の理不尽に直面し様々な悩みや問題を抱えており、決して華やかでなくフィクションでは脇役や小さな扱いになりそうな雰囲気。そんな人達の人生に焦点を当てている所が凄く好印象且つ平蔵達は時に解決策を提案するも基本は聞き役に徹する押しつけがましさを感じさせない所が〇。また、どの悩みや問題もかなりリアルで数分の内容ながら共感したり心に残るものが有ります。

特に印象的だったのはゼネコンで働いていた元建築士のホームレスが登場する第7話「やり直せるものなら」。建築士としての正義を貫くものの結局職や家族までも失った男。現実にはヒーローになれなかったが彼は<選択>に後悔しておらずそんな彼の背中に平蔵達はそっと寄り添います。

心の中で近所の子供にずっと挨拶していた女性が登場する第6話「覚えておきます」、独身の50代女性の家に寄り「もし、失敗のない人生だったら視野は広がりようがない。努力が報われた幸運な人は、不運な人の生き方もその思いも気付くことはなく終わっていくだろう。不運、理不尽を知る者こそ、友としたいと思われませんか」という台詞が好きな第12話「一緒に飲みたい人」も印象的。

平蔵達の仲間であるハチワレ猫、ニイは登場するもワカルや年配の作家先生等気になるキャラは未登場の今作、続編も希望しています。
浅野公喜

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