浅野公喜

機動戦士Vガンダムの浅野公喜のレビュー・感想・評価

機動戦士Vガンダム(1993年製作のアニメ)
3.9
実はガンダムシリーズはちゃんと観た事が無かったのですが、内容が濃いという評判、Youtubeでの90年代アニメ予告集で予告の格好良さに惹かれた事、そこで流れていたOP曲の歌詞に落ち込んだ時勇気付けられたのがきっかけで鑑賞。リアルタイムで記憶に有るのはターンAやSEEDなので、1つか2つ上の世代が観ていたのが今作になるのでしょうか。主人公ウッソを演じたダイスケ・サカグチは自分と同じ高校出身だったりします。

登場人物がとにかく沢山容赦なく死ぬ(シュラク隊やリーンホースJrの面々・・泣)。富野監督は子供をターゲットにしていた作品にしようとしたみたいですが病んでいたらしく(笑)、そのズレが今作の評価が分かれた所かもしれませんが、戦争が持つ理不尽さや無慈悲な部分の反映と捉えればリアルですし、メインの視聴者であった子供にとってはちょっと重いかもしれませんが今の自分にとっては丁度良い描写の作品でした。ウッソ達も非常に前向きで人が言う程暗い作風ではなく、ヒロインのシャクティも批判が色々有るみたいですが、自分の立場故に何かをしなければならないという使命感を持ち行動している姿は健気です。ガンダムシリーズのマスコットキャラ、ハロも大活躍し「やべえぜアニキ」なんて台詞を吐いたり、アイキャッチでは巨大化する等今作のオアシス的存在になってます。

また、子供が戦争に参加していることでショックを受けたのかプライドを傷つけられたのか自決する男やウッソを亡くした息子と重ね合わせる漁師、カテジナという戦争に翻弄された女性といった濃いキャラも登場し、カテジナに関してはそのストックホルム症候群的変化が描写不足というか唐突なのが少々不満ですが豊田真由子元議員にも継承される変化後の挑発的言動と態度が面白かったりします(そもそも今作はお姉さんキャラが味方敵含め活躍する上に強烈なのが多い!)。シュラク隊にケイト・ブッシュ、ペギー・リー、コニー・フランシス等実在の海外の女性歌手の名前が使われているのはシャルル・アズナヴールをシャアの名前の由来にした富野監督の趣味でしょうか。

戦争ばかり行う男性社会の代わりに女性社会への回帰を主張するマリア主義は邪馬台国を彷彿させるという記事を見ましたが、アフリカはケニアに有る女性しかいないウモジャ村を個人的に連想しました(今作の2,3年程前にケニアに設立された村らしく、世界情勢に精通している富野監督なら多少影響受けているはず・・?)。

最初に書いたOPとそこで流れるリンドバーグのベーシスト・川添智久歌唱「Stand Up To The Victory」は凄く気に入っていて、「その向こう側に何もなくてもかまわないから」というフレーズは妙な虚無感も有るのですが「(結果何も得られなくても)勝利に立ち向かえ、それに意義があるんだ」という人生へのメッセージにも捉えられますし、サビ前のウッソジャンプも両手広げて走ってるウッソも〇。

脇役ではちょっと不器用なウォレン・トレイスが好きです。
浅野公喜

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