真田ピロシキ

進撃の巨人 The Final Season Part 2の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

進撃の巨人 The Final Season Part 2(2022年製作のアニメ)
4.0
「悪魔なんかいなかった」憎しみが恐怖が無知が滅ぼすべき敵を作った。人を人として見なかった誤ち。エレンによく似たガビが物語のテーマを表す上では主人公と映るほど重くて、ガビとカヤが憎しみの連鎖を断ったことに込められた想い。ずっと先祖から続く呪いとも言うべき因縁を受け継がされてきた子供にさせたことが尚更大きく、2人を繋ぐこととなったサシャが物語で果たした役割も心を打つ。まずは対話してお互いを知れ。殺し合いの果てに行き着くのはどちらかの殲滅しかない。最近防衛と言う名目で先制攻撃をちらつかせている日本に刺さる。

諫山創にはやや右寄りなものを感じて自分とは合わないところが結構あるのだが、島の中で完結していた時は勇ましい存在として描かれがちだった軍がここに来て軍国主義色を強めて描かれ批判的に見えるようになる。良心的な人間はいるしイェーガー派とて悪人というわけでもないが、「心臓を捧げよ」という言葉の意味は完全に変化。こういう視点があるので考え方が違っても作者には安心ができる。もっとも受け手がどうなのかは分からないのだけど。

今シーズンは巨人戦が大盤振る舞いされるのだが、人間側がとても強化されていて以前ほどの圧倒的ではなくなっている。特に巨人退治のノウハウを蓄積した調査兵団が大陸の技術まで取り入れると雌型、鎧、車力、顎の特殊巨人がいてもなお劣勢。これが巨人を敵としてる頃の話ならば頼りになることこの上ないが、ここではフロック率いるイェーガー派兵団が敵で巨人が味方サイド。最初から見ている人には裏切り者とコニーらを罵るイェーガー派の気持ちが分かるので、高レベルのアニメーションで倒していっても全く爽快感などない。戦いを見てはしゃいでいるんじゃないと言っているかのようで、少年漫画に分類されてることを思うとこれも作者の真剣な態度が感じられる。

最後はそこまで発達した人類の技術を持ってしてもまだ止めようのない絶望の地ならし。一番恐ろしいのはエレンは絶対に意志を曲げないことで、それは物語の最初から散々見せられてた。エレンの非道が全て純粋な故郷の仲間を未来永劫守るためなのが間違っているけどエレンの考えとしては分かってしまう。どう結末をつけるのか。