真田ピロシキ

進撃の巨人 The Final Season Part.1の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

進撃の巨人 The Final Season Part.1(2020年製作のアニメ)
3.9
ファイナルシーズンのPart1とややこしい。いきなり第一次世界大戦のような描写から始まり、ナチスな国家マーレで繰り広げられている戦時下の光景。スポットライトが当たるのは巨人を受け継ぐ戦士候補生の子供ファルコとガビ。エルディア人は過去に民族が犯した罪の償いとして名誉マーレ人として戦い、パラディ島の悪魔どもを滅ぼすことが絶対の正義だと信じ込まされている。ガビの姿はアルミンが言うようにかつてのエレンにそっくりで、翻弄されたエレンを既に見ている身としては哀れみしかない。上の世代から差別や憎悪など負債が子供に受け継がれ続けることの悲劇がこれでもかと語られて止まらない。ジークもエルディア人の復権を目論む親に一方的な使命感ばかりを押し付けられた被害者で、無邪気にリヴァイ兵長にあの髭野郎を切り刻んでくれなどとはもう言えやしない。だからと言って解決策が超大規模の優生保護法ってないし、パラディ勢力のヒストリアを産む機械と考えるのもありえない。サシャの父が言うように森の中で生きているにすぎない子供達にもっと広い世界広い視野を与えられなければ世界は不幸から抜け出さない。一般人がこんな一番大事なことを言ったことの意味を。

諫山創という人はどうも自分とは価値観に隔たりがあるようで、全編を貫くマッチョさや不戦の誓いやエルディア人の過去の贖罪に関する描写にはキナ臭いものを感じるのだけれど、差別をはじめ人を人として見ない行為は絶対にクソという人権意識は確実に持ってて冷笑的な態度も示さないので、価値観の相違がそこまでノイズにはならない。それだけはっきりした姿勢を見せてるのに反ポリコレと持ち上げる人がいたり、否定の対象でしかないマーレの腕章をグッズ化しようとされたり誤読する人の多さに呆れる。