むぅ

平家物語のむぅのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.3
「諸行無常...」

数年前の秋。
友人と久しぶりにあの飲み屋に行こう!と、それ以外では用のない駅に降り立った。
[閉店しました]
その貼り紙を見ながら、2人でそう呟いた。

今年は『鎌倉殿の13人』を観る。大河ドラマ、久しぶりだ。

「あ、後、梅水晶も下さい」
「好きだねー」
「え?好きなのそっちでしょ?」
「え?」
他の飲み屋を見つけて飲み始めた。あると頼む梅水晶。お互いに、相手の好物だと思って注文していた事が発覚した。

そんなわけで"梅水晶を頼む"という私達の史実にさえ、解釈の違いがある。

『鎌倉殿の13人』を余すところなく楽しむために『平家物語』も観ることにした。"フェアにいこうぜ"みたいな感覚である。
平清盛や源頼朝からしたら「梅水晶と一緒にせんでくれ」ってところだろうが。

「ほ、北条義時って誰だっけ..」
というレベルの記憶しか残っていない私でも平家が辿る運命はさすがに覚えている。
その結末を知りながら観るので、登場人物たちの笑顔に苦しくなったりする。
そんな彼らを、オリジナルキャラクターの"びわ"という少女の視点から描く。
あぁ後の琵琶法師か、となる。
琵琶法師は視覚障害を持つ方が多かったんじゃなかったっけ、と思ったところで、彼女の瞳の色が左右で違う事に気付く。
その色の違う瞳に映るものが、平家の運命を巧みに示唆していく描写が見事だ。
アニメーションだからこその描写に感心してしまう。

あっ、このシーンは。
社会の歴史の授業ではなく、国語の古文で学んだ有名なシーンが出てくるたびに、もっとしっかり勉強しておけば良かったと思ったり、当時これを観ていたらもっと興味が湧いただろうと思ったりした。

"望まぬ運命が不幸とは限らない"
しなやかで強い女性として描かれる登場人物のその言葉が心に残った。
その時代その時代の"強くあろうとした女性"を描く物語を最近よく観る。これも視点を変えたら、そうなるのかもしれない。
本来なら対立していた女性2人を、たった一瞬の目配せで違う関係性を見出せるように描いたところに感動してしまった。
800年も前の物語に、上手に現代の価値観・解釈を織り込んでいる。

とても面白かった。

「アニメの『平家物語』が面白くて!中学の古文で習った箇所を、多分こっちの記憶が蘇るように作ってるのかなぁって思うシーンがあったんだよね」
「あー、俺中学で平家物語はやってないわー」

君と私は幼馴染。
もちろん中学校は同じ。
人間の"隠蔽の歴史"を垣間見た。
むぅ

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