真田ピロシキ

サイバーパンク エッジランナーズの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

4.0
ウィッチャーシリーズで有名なCD PROJEKTのオープンワールドSFゲームのスピンオフ?アニメ。ウィッチャーはシナリオは良かったがゲームはさほど楽しめず、もう長いオープンワールドゲームをやる気力もなくてノータッチであったが、このアニメの評判が随分高くTwitterの相互さんに尋ねたらゲームを知らなくても飲み込めると聞いたので、去年の『アーケイン』のようなゲーム原作アニメを期待して鑑賞開始。

これは確かに面白い。肥大化しすぎた資本主義と科学技術が行き着いた最低の大企業が牛耳るディストピア。最初に憎しみを一身に集めるアカデミーのボンボン タナカカツオ。金持ちというだけならありがちな悪役なのだが、この世界はインプラントを埋め込むのが当たり前で、カツオのように金持ちの子供なら格闘用の最新インプラントをインストールしていて貧乏な主人公デイビッドでは努力しても太刀打ちできない。才能云々の前に元となる資本力がなければ同じスタート地点にも立てない圧倒的な壁。息子の才能を信じ無理してデイビッドをアカデミーに通わせていた母は街で撃ち合いに巻き込まれ、保安部隊は貧乏人など気に留めずにあえなく死亡。ひでー話だ。だけど棄民政策が進行し続けてる腐り切った日本に住んでいるとあながち絵空事とも思えないね。大企業とアメリカとカルト宗教とお友達のために税金をばら撒いてその結果自業自得で殺された最低最悪なクズジジイの茶番国葬を滞りなくやるために、台風で甚大な被害を受けた地方を黙殺してた日本の人間としてはね!そう言えばカルト宗教の手先が教育に関して身の丈に合ったとかも抜かしてやがってて先に述べたカツオの下りに通じますね。リアリティがあって寒気がしそう。

復讐心から軍用インプラント サンデヴィスタンを付けたデイビッドは謎めいた女ルーシーとの出会いをきっかけにサイバーパンクというアウトロー集団に属し仲間と青春とも言える一時を得るのだが、所詮それは裏稼業。常に死がまとわりつき次々と失う仲間。兄貴のように慕っていたボスのメインもインプラントの暴走によって起こるサイバーサイコとなって死んで、後を継いだデイビッドは身も心も人間からかけ離れていく。力を得て界隈ではそこそこの名声を得ても何者かになれたとは言えず、ただただ呪いのような道を歩まされるデイビッド。そこではひたすらに命が軽くて、誰であろうと全く容赦のないエグい表現がこの世界を残酷に映し出す。

デイビッド達のみならず敵となる成り上がりを狙ったファラデーや裏切ったキーウィもクソ大企業に踊らされるだけ踊った末に使い捨てられてマジで腸が煮え切りそうな格差社会。アダムスマッシャーとてコマの一つでしかないだろう。母が息子に願ったアラサカの頂上は血と汚物に塗れて腐り切っている。現実の大企業だって直接的に殺しはしないだけで似たような血の通わないものじゃないか?電通とか。あっ、過労死で殺してたか。資本主義の病的さをとても感じ取れてエッジの効いたアニメである。そんな中でデイビッドが唯一叶えたのが愛というセンチでもあるロマンは嫌いじゃない。

今石洋之が監督で後半のデイビッドがサイバースケルトンで合体ロボの如くゴテゴテしくなるのはグレンラガン味。無想転生?或いはキングクリムゾン?と思ったサンデヴィスタンのスロー演出もメッチャcool!機械化してる人が多くユニークで、特にレベッカは赤い目とエキセントリックなキャラクターで1番好き。非情の世界なのでああなることは覚悟してたさ…

あまりやる気のなかった原作ゲームも3話くらいに入った頃にはやりたくなってた。キアヌ・リーブスに会えるしな。ジュディさんという女の人が気になってて、ロマンスは同性限定だそうなので、普段名無し主人公のゲームは自分と同じ男性にしてるのですが、このゲームは女性主人公で行くと思います。銃をハックして爆発させるようなゲームのチュートリアルのような演出もあって、ゲーム販促アニメとしても最高だ。しかしサイバーサイコがあり得ないほど強そうなんだけど勝てるのかな。このアニメの印象が強すぎて意外と簡単に勝てたらガッカリしそう。