滝和也

相棒 Season 8の滝和也のレビュー・感想・評価

相棒 Season 8(2009年製作のドラマ)
4.7
庁内Sとして
送り込まれた男神戸尊。
調査対象は…
特命係、杉下右京。

杉下右京の正義の剣は
相棒を変えても真実を
白日の下に照らし出す!
その時、神戸尊は…。

「相棒 season8」

大人気刑事ドラマ相棒の第8弾にして、亀山薫こと寺脇康文の卒業による相棒交代から新相棒神戸尊=及川光博による初のシーズン。

前シーズン最終話で警察庁から杉下右京の監視、調査と言う名目で2階級降格で警部補となり、送り込まれた庁内Sと言うポジションで相棒となった神戸尊が如何にして本当の相棒となっていくかが縦軸として織り込まれた。

神戸尊のキャラクターを固定させ、右京さんとの信頼感を醸成させるべくストーリーは展開されるため、比較的シリアスかつハードなストーリーが多い。

また新鋭脚本家として相棒ファンには評価された太田愛さんが相棒デビュー。抒情性溢れた良質なストーリーを紡いでくれている。大学時代の友人たちが良き時代に戻れない事を知る「さよならバードランド」を皮切りに、神戸尊と言うキャラを打ち出した大女優草笛光子ゲスト回「ミスグリーンの秘密」、時効事件の関係者全ての苦悩と罪を描いた「願い」と印象深い。

エリートであり秀才の神戸尊に杉下右京と言う天才の人となり、その博覧強記、自らを超える頭脳明晰さを理解させる為に用意された正統派ミステリーも魅力の一つ。錯覚を操る大学教授との対決を描いた「錯覚の殺人」、車窓を撮影した動画に僅かに写った過去の収賄事件により自殺した人物から過去の殺人事件を掘り起こす「背信の徒花」、バスジャックから消えた乗客、乗務員を追う「消えた乗客」、フーダニットとして魅せる「仮釈放」「マジシャン」、爆破シーンも印象深い心理学、サブリミナルを用いた立証しにくい「隠された顔」(これは僕もスモーカーなので爆殺されそう(笑))等ミステリーサスペンスファンも納得の作品群が続く。

社会派である相棒らしいスタイルのストーリーも当然ラインアップ。日本国内の外国、基地の存在が事件に繋がる「フェンスの町で」、政権交代により与党となった清廉な代議士がその重圧と使命感に押しつぶされた「堕ちた偶像」。そして社会保険庁の年金問題をストレートに批判した「鶏と牛刀」。

この鶏と牛刀は力作で杉下右京と官房長の利害が一致した時に起こる凄まじい力を見事に描いており、法の下、公の下の正義が合致した見事な回。同じく官房長小野田公顕、岸部一徳さんの見事な演技が見れるのが古谷一行演じるテロ組織赤いカナリアの幹部本田篤人と対峙する「カナリアの娘」。

各話で杉下右京の凄まじい正義と事件の悲しき真実を知っていく神戸尊自身に降りかかる悲しき現実…元旦スペシャル「特命係西へ…」どえらく長いタイトルが表す様に2時間ものの歴史旅情ミステリーであり、こちらも杉下右京の博覧強記を表す回だが、右京さんが神戸尊と言う存在を理解し、相棒として歩み寄る回ともなっている。また縦軸である庁内Sと言う悲しい存在を自らの合わせ鏡とする「SPY」。また右京さんを天才と評し凡人には見えないものが見え、必ず応えを導き出すと言う伊丹いや刑事の現実と挟持を知る伊丹主役回「狙われた刑事」を経て、自らの目的を知り、右京さんの真の相棒として覚醒する最終話「神の憂鬱」。縦軸が見事に繋がり、相棒のシーズンがまだこれからも安心して続くと理解できた傑作回だった。

コメディ回が極端に少ないこのシーズンで異彩を放つのが、再登場もあった三人組が引き起こす「怪しい隣人」。そして時系列を崩した構成がガイ・リッチーの様な古沢良太脚本回「右京、風邪を引く」。他の回でもよく見られた右京さんに聞こえないように、右京さんの理不尽や横暴に嘆き、毒づく神戸尊の常識人、エリート官僚の様なキャラ演出をフルに活かした脚本でこちらも神戸尊のキャラを固定する演出だった。

明らかに、亀山薫とは違う神戸尊と言う新相棒を印象づけ、その新しい魅力を出し、杉下右京と融合させた見事なシーズンであり、まだまだ相棒は続くなぁとファンを安心させてくれたある意味中興の祖だろう(^^)
滝和也

滝和也