滝和也

仮面ライダー龍騎の滝和也のレビュー・感想・評価

仮面ライダー龍騎(2002年製作のドラマ)
4.3
正義とは何か…
正義とはそれぞれ
の人に存在する
曖昧なものだ…。

故に仮面ライダーは
人間の自由と平和の
為に戦うのだ…。

「仮面ライダー龍騎」

13人の仮面ライダー。石森章太郎先生が描いた仮面ライダーの一節である。そのアイデアにインスパイアされ、ライダーバトルと言うライダー同士のバトルロイヤルを描いた平成ライダーの中でも異色の作品にして第三弾。

ミラーワールドと呼ばれる鏡の中の世界に棲息するミラーモンスターとカードデッキにより契約し、モンスターの力を得て変身する仮面ライダー達。謎の男神崎士郎が作り出したシステムを与えられたものは、最後の一人になるまで戦わなければならない。(他のモンスターを倒し、エネルギーを捕食しないと腹を空かせた契約モンスターに契約者が捕食される)だが…最後の一人になった者には願いが叶うと言う。故に…死を賭してライダー達は戦う…。

史上最も馬鹿な主人公…城戸真司。故にこの仮面ライダーらしくないストーリーと共にあまり好きではない作品。見返すまではそう思っていた…。

だが…そうではなかった。
城戸真司が最も正統なる
仮面ライダーだった。

彼は偶然カードデッキを手にし、成り行きからライダーとなり、ただ…人を捕食するミラーモンスターを倒し、人を守ろうとした。そして人同士の殺し合いであるライダーバトルを止めようとする。ライダー達にはそれぞれの願い=正義や主張があり、常に悩み、その願いに共感し、時に怒り、戦いを嫌いながらも戦う。その姿はある意味狂言回しであり、お馬鹿キャラと相まって主人公らしさが無いように見えた。だが…真司は前代未聞の衝撃のラストを迎える。

最終回前のその瞬間、気づく。彼はただ命を守りたかったのだと。彼には願いも主張も彼なりの正義もみえなかった。他のライダー達の壮絶な背景による説得力はなく、そのキャラクター故に薄っぺらにしか見えない。だが…最終6話には彼が真の仮面ライダーであることの説得力が詰め込まれている。

ライダーは正義を守る者ではない。冒頭書いたように龍騎のライダー達にはそれぞれの正義しかないし、それは他者にとっては正義ですらない。だが…薄っぺらく見えた城戸真司の他者の命を守ると言う事が人間の自由と平和を守ると言う仮面ライダーの本分であり、最終シークエンスにそれが詰まっている事がわかり、説得力を増したその最後と共に涙してしまう…。彼こそこの異世界の様な仮面ライダーで唯一無二の仮面ライダーであったことに。

ライダー達の背景にはそれぞれに重い正義がある。それが各キャラクターの魅力を存分に映し出した。2号ライダーである仮面ライダー騎士(ナイト)秋山蓮は神崎士郎の実験に巻き込まれ昏睡状態にある恋人を助ける為、バトルに参加するが、心ならずもライダーバトルを止めようとする真司と共闘していく。真司の薄っぺらな理想主義と重い現実を抱える蓮。馬鹿過ぎる真司と口が悪く不器用な蓮のコンビは対照的でありながらも、時に反目しながらも助け合い支え合い勝ち抜いていく。その姿はやはり美しく、ストレートな共闘でなくとも深い繋がりが作り上げられて行ったのが分かる。

神崎士郎…彼が何故このシステムを作り、戦わせるのか、戦いの先に何が待つのかと言うミステリ部分も程よく機能している。そのキーマンとしてのヒロイン神崎優衣の存在も大きく、比較的軽んぜられたライダーヒロインの中でもかなり目立つものだった。優衣、真司、連のトリオがストーリーを紡ぐわけだが、そこにそれぞれの願いを持つライダー達が参戦してくる。

有能な弁護士であり、美形、全てを持っているかと思われる北岡は仮面ライダーゾルダとして。北岡にもどうしても叶えたい願いがあった。秘書である由良吾郎とのコンビはコメディ、シリアス共にイケる名コンビだった。またこの北岡役の小田井涼平は現在最も成功者かもしれない。純烈の成功によるが、この作品が無ければ純烈でもなかっただろう。

そして彼の存在がストーリーを動かし、面白くしたと言っても過言ではない男が浅倉威。荻野崇演じるそれは仮面ライダー王蛇に変身する犯罪者である。完全なる絶対悪であり、暴力の権化であり、粗暴犯。参戦する理由も戦いたいから戦うのである。暴力に身を任せないとイライラして自傷行為に出るから。つまり完全なる絶対悪であり、そんなライダーは嘗てない。(シャドームーンも洗脳されてますからね)彼の存在がライダー達にトドメを刺し、ストーリーが進み始める(神崎士郎の意図通りだが…)し、彼には願いらしい願いも無く異質さが他のライダー達の存在を更に印象づけた部分もあるだろう。

ライダーらしくないが、これも仮面ライダーだと言う新機軸として受け入れられた龍騎はエポックメイキングな作品となり、平成ライダーの世界観を広げた。そのコメディを含んだハードな世界観は更に次作555で先鋭化する。またカードバトルはベルトのギミックを更に増やし、平成2期作品の大成功へも繋がっている。仮面ライダー龍騎は異質な作品であるが、主人公城戸真司の存在により、仮面ライダーであったと言う部分を記してレビューを終わりたい。
滝和也

滝和也