うかりシネマ

エンパイア・オブ・ライトのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

1980年、イギリス。映画館で働くヒラリーは、新入社員のスティーヴンに惹かれていく。
中年女性のヒラリーは男性社会に抑圧されている。スティーヴンは黒人の青年で、当時のイギリスでは黒人への迫害が強まっていた。この二つの属性——二人への加害が、直接的な形で描かれ、鋭く切り取られる。

二人の置かれた状況は苦しく、歳の差のある二人の恋愛も難しい。二人ともが生きづらさを抱えている。
ヒラリーを苦しめる社会のメタファーは強烈だが、それゆえに自由のメタファーも分かりやすく真正面から描かれる。
分かりやすいメッセージ性を持っているが、プロットは複雑。ミッドポイントはヒラリーの転換にあり、クライマックスもヒラリーについて置かれるが、その後はスティーヴンが転落し、ラストシーンもスティーヴンを描くものとなる。

映写機のフィルムを入れ替えるシーンがある。1巻の終わりにタイミングよく2巻に切り替え、即座に3巻を準備しておく。準備をしてスムーズに切り替えるそれは人生のようで重圧を感じる。
しかし2巻に切り替えた後は次のポイントまでの休憩時間があり、この映画で描かれるのは“2巻目”の時間なのだろう。