幽斎

デ・ヴィル家への招待状の幽斎のレビュー・感想・評価

デ・ヴィル家への招待状(2022年製作の映画)
3.8
【警告】本作は予告編で壮大にネタバレと言う暴挙に出た為、アメリカでは製作元ソニー・ピクチャーズに非難が殺到した曰く付きのオカルト・スリラー。ジャケ写は北米版と同じ良いデザインで、興味をソソられるけど。AmazonPrimeVideoで鑑賞。

Jessica M. Thompson監督、長編2作目。デビュー作「The Light of the Moon」日本未公開だが、SXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭で受賞歴の有る、短編映画では名の知れた存在。インタビューを見ると美人でスタイル抜群(オッパイ(笑)。自身もウエイトレス役で出演。日本ではNetflixで御覧頂ける。

ソニー・ピクチャーズはレビュー済「ポラロイド」Blair Butlerの書いた新作の権利を獲得。ノンクレジットだがプロデューサーにソニーと親交の深いSam Raimiが加わり、レビュー済「アンホーリー 忌まわしき聖地」Robert Tapertも参加してタイトル「The Bride」製作決定。Raimiはレビュー済「ドント・ブリーズ2」の為に離脱するが、仕上げたコンポジットはRaimiが制作に加わる事で引き継がれた。最初はEmma Robertsの子供まで産まれたGarrett Hedlundが主演だったが、飲酒運転で事故を起こし逮捕、Thomas Dohertyに交代、ソニーのスタジオが有るハンガリーのブダペストで撮影。

もう一人の主演イギリス美人Nathalie Emmanuelは「メイズ・ランナー 最期の迷宮」「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」等、ハリウッド大作に出演するメジャー女優。その甲斐あってか本作は全米興行成績初登場一位を獲得、1位ですよ(笑)。気を良くしたソニーは続編の構想も明らかにしたが、ソニーの株主として忠告するが、気は確かかと苦言を呈したい。確かにプロットは悪くない、キャラクターも安易な予測はさせず、興味を繋ぐシチュエーション等、Raimiがテンプレートを制作した雰囲気は流石だった。

英国の映画祭で美術賞を受賞した様に、オープニングの書斎からのシーンは監督のセンスも感じるし、適度なジャンプスケアとホラー要素が加味され序盤から良い出出し。ラブアフェアな展開もスリラーを程好くブレンドして「コレは良作かも」感じさせるパフォーマンスだが「結婚」辺りから怪しく為り、結末を急ぎ過ぎた為、クレジット直前のオチも、イギリス映画風を気取る割にはスマート感に乏しい。

上品な英国紳士と一般的なアメリカ人女性の組み合わせをアメリカでは「Hallmark Romance」日本語に訳すと鉄板と言う意味ですが、アメリカ英語的な揶揄なので、本作にピッタリ。基本的なプロットはスリラーの十八番「Liberal arts」人を束縛から解放する手法に基づくモノで、演出よりも脚本に瑕疵が有り感想を一言で言えば「Ready or Not」(そんなタイトルの映画も有ったな(笑)。Sam Raimiには最後まで居て欲しかった、と思わせる残尿感も感じたが雰囲気はバッチリ、暗いシーンが多いので貴方のモニターの解像度も試される。原題「The Invitation」在りそうで無いタイトルだが、単なる招待と言う意味では無いので、英語が解る方には秀逸に映る事は間違い無いだろう。

【ネタバレ】物語の核心に触れる考察へ移ります。自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

本作は超有名なBram Stokerの傑作「Dracula」を忠実にインスパイア。新しい獲物を求め英国に侵入したドラキュラ伯爵と、吸血鬼ハンターの代名詞Van Helsing教授の戦いを描くゴシック小説。主演Thomas DohertyもTVシリーズ「ドラキュラ」出演歴が有るのは偶然だろうが、De Villeと言う名前も現代のルーマニア語「ドラクル」の英訳「Devil」悪魔と言う判り易いイントロダクション。カーファックスもオリジナルのドラキュラの修道院と一致。「アレ?」と思ったのはロールスロイスが左ハンドル、イギリスが交通様式を教えた為、日本は世界でも珍しい右ハンドルだが、英国の象徴がアメリカ仕様なのはご愛敬。ソニーは「モービウス」(ヴァンパイア映画)と本作をリンクさせたいらしい。

吸血鬼ホラーと分って観ても途中までは結構イイ感じで推移する、最近はメッキリ、ゴシック調のヴァンパイア映画が少ないので、「血」に餓えて渇望してるファンは大勢居るだろう、問題は全てを葬り去る「予告編」。運よく予告編をスルーされた方は幸運だが、最悪なのは予告編が本編の美味しい所を洩れなく晒すので、ソレ以上のサプライズが何も無いと言う出涸らしのお茶以下、予告編が本編のダイジェストと言う歴史に残るミスを犯した。ラストの展開には後日談が或る。実は本作にはエンディングが3種類有るのだ。

監督オリジナルの結末はウォルター(ドラキュラ)だけ内密に殺し、イヴィの吸血鬼化を止めた上で他の血族を狩る為に空港へ向かうシーンで終わらせた。しかし、北米版ではイヴィは吸血鬼の力を残したまま、屋敷を燃やして血族の本家ルーマニアを目指すシーンで幕を閉じる。インターナショナル版は、イヴィはロンドンへ行き、ニューヨークの友人と共にオリバーの事務所に向かう所でエンディング。全ては完成後に作り直されたモノで、監督は本来の結末では無いと主張。ソニーは続編を作りたくて、干渉した事は認めてる。

監督は本作のレーティングPG-13では無い、削除されたヴァイオレンスやセックスシーンを追加した「R18+」バージョンを追加配信する事でソニーと和解。コッチの方が絶対面白いって、日本でも流してよソニーさん(笑)。「ザ・メニュー」「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」先週レビューした「エスター ファースト・キル」何でも燃やして強制終了する作品が悪目立ち。本作もPolitical Crrectnessなプロットが散見、レビュー済「ナイル殺人事件」「サイレントナイト」も白人と黒人のカップル、私はLGBTQには理解のあるレビューを心掛けてるが「トワイライト」(ヴァンパイア映画)の方が女性は共感し易いと思う。何でもカンでもポリコレだと見てる方も食傷気味、最近のアメリカの風潮にも言及したい。

www.youtube.com/watch?v=5bL1ftuxgOE ←決して鑑賞前には見ないで下さい。
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