幽斎

ブラックライトの幽斎のレビュー・感想・評価

ブラックライト(2021年製作の映画)
3.8
世界中の、特に英国系俳優なら誰でも演じたい役、ソレは「007」James Bond。名誉ある役を自ら辞退した俳優、ソレがLiam Neeson。Tジョイ京都で鑑賞。

「007/ゴールデンアイ」Neesonが辞退したのでPierce Brosnanが選ばれた。当時の彼は英国の名女優Vanessa Redgraveの娘Natasha Richardsonと結婚。彼が俳優として名が知られる時期と重なるあげまん。だが、モントリオールのスキー場で転倒して脳死、45歳没。彼ほど知名度のある俳優がスキャンダルと一切無縁で再婚もしない。誰とは言わないが見習えと声を大にして言いたい。Neesonも既に70歳、古希を迎えるが、馬車馬の様に働くのは失意の哀しみを打ち消す為かもしれない。

「Black Light」と言う作品は既に存在し「スキャナーズ」「トータル・リコール」最近ではレビュー済「Mr.ノーバディ」元気な姿を見せてくれたB級スターMichael Ironside主演作。因みに共演はTahnee Welch、20世紀最高のグラマーRaquel Welchの娘、見事にソックリ!。と言う訳で本作の正式タイトルは「Blacklight」間違い探し(笑)。

black lightは僅かに眼で見える長波の紫外線を放射する電灯。光自体は人間の目に殆ど見えないが、当てた物体は内部に含まれる蛍光物質だけで発光。ペットを飼ってる方には必需品だが。ホビーとしてもアマゾンで人気商品。だが、アメリカ英語では見えない内部を可視化する諜報機関の隠語と言う意味も有る。

本作はレビュー済の前作「マークスマン」プロデューサー、同じくレビュー済「ファイナル・プラン」監督も務めたMark Williams。Neesonも絶大な信頼を寄せるが、本分は傑作クライム・スリラー「オザークへようこそ」昨年シーズンⅣがリリースされたNetflix看板番組の立案者。才能ある人だが映画に為ると人が変わった様に、京都で言うなら高野豆腐とか味噌田楽並みに激シブな作風に変貌する。

本作はWilliams監督とNeesonが「今からロスでロケだと寒いので南半球で撮影しません?」「俺も最近寒さが身に染みるんだよね」と言ったか知らんけど(笑)。キャンベラとメルボルンで撮影するオーストラリア映画。作品はNick MayとBrandon Reavisの書いたFBIの実在する内部組織ブラックライトが原案、ソレを監督が映画用に仕上げたが、観ると前半のプロットが比較的面白いのは原案のお陰だが、後半が完全に失速して尻すぼみして観客にブン投げるのは監督の別な意味での手腕だろう。

Aidan Quinnが出演するのはサプライズ、私の2022年一位作品「ザリガニの鳴くところ」Taylor John Smith(製作順では本作が先)とか地元オーストラリア女優Claire van der Boomとかキャストの布陣は悪くないけど、ソレを除けば今まで何度見たか分らないテンプレなプロット。ハリウッドでは「Bruce Willis Syndrome」と言うが(笑)、Nicolas Cageの様に何でも構わず出演する事を指すが、Rotten Tomatoesも「リーアム・ニーソンの中でも最低映画」と貶す様に、典型的なB級映画。

ニコケイは卑しくもオスカー俳優の称号が有るが、Neeson程の演技力を以ってもオスカーには無縁で本人が賞レース狙いの眠い作品のオファーを断り、Steven Seagalの様にDVDスルー作品を連発する隊列に加わるのは、ファンの老婆心ながら如何なモノかと。同世代Mads Mikkelsenとの差が、ドンドン離されてる事に忸怩たる思いも有る。

良い所と言えばオーストラリアのスタントマンが気合を魅せる。劇場らしい重低音が響くガン・アクションと、クライスラー・ダッジチャレンジャーの迫真のカーチェイス。オーストラリアの映画祭で音響効果賞にノミネートされたのも納得の出来栄え。コレは配信で見ても迫力は伝わらない。因みに中盤のカーチェイスは最新のLEDスクリーンで撮影。レビュー済「ブレット・トレイン」同じ手法。コレなら予期せぬ事故も防げて古希を迎えたNeesonもニッコリ(笑)。

でもね、コレで良いんです。最近のシネコンって本作公開当時で言えば戦国の歴史考証を完全無視したキムタクの時代劇とかアニメとアイドル映画ばかり、ホントにツマラナイ。作品のクオリティは一旦横に置いて、大人が見る映画がホントに少ない。嫌ならミニシアターへ行けよ的な空気すら感じる。私もアラサーなので、ギラギラした映画が素直に楽しめなく為ったけど、ソレが歳を重ねる事と身に染みる今日この頃。だからこそ、仕事帰りに一時の休息を求めて激シブ映画を観る。シネコンにも大人のレッドブルを!。

午後ロー的アクション・スリラー。水戸黄門の様な偉大なるマンネリを楽しむのも一興。
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