完成披露試写会にて
登壇者:三宅唱監督、岸井ゆきの、三浦友和(敬称略)
聴覚障害のあるケイコはプロボクサーだ。
彼女は喋ることはないが、真っ直ぐな瞳と実直な姿勢で、ボクシングジムの人々と拳で交流をしていた。
そんなある日、ジムが閉じられると知り…
ボクシングが楽しい気持ちと、女性としてそして周りの人からの気持ちが相反し、ボクシングを続けるべきかどうか悩む。
彼女は強くない。だが伝えてもしょうがないという気持ちで悩みを誰にも打ち明けることはない。
発せられる言葉は少なく静かだが、周りの環境は音に溢れている。ペンを走らせる音、電車の音、風の音、そしてボクシングの音。ノイズのようにも聴こえるほど沢山の音が聞こえる。
聴こえなくて良い言葉も、彼女は聞くことはない。
だが、それが良いことではけっしてないはず。
彼女の生活は数々の苦労の上に成り立っていることが窺えるからだ。
例えば、マスク。本作はコロナ以後の世界として描かれるが、口の動きで言葉を理解する彼女にとってはマスクは死活問題なのだと考えさせられる。
河原と、ケイコ。
彼女は悩むと訪れる。
そこにずっとあり、受け止めてくれるからなのかもしれない。
非常に丁寧に描かれてはいるが、ボクシング映画としては少し淡白な演出なので、もう少しだけ見る側にカタルシスがあっても良いのかもしれない。
弟を演じた佐藤緋美くんが良い味出してて良かった。
完成披露試写会トーク
まず岸井ゆきのさんが決まり、その後監督が決まった。
台本が出来る前にトレーニングが始まり、頭で役を考えるよりも身体で感覚的に役を作っていった。
監督登壇アフタートーク
カフェのシーンは意図的になしにした
弟が音楽をしているのは音のある世界に生きていることをあらわしている
静止画の試合の写真で試合の激しさを観客に想像させた
コロナ禍の世界にしたのはマスクの目をファクターにしたので
16ミリにしたのは題材にマッチすると思ったから
ボクシングの撮影は大変
16ミリにすることで撮影制限が出来る
生活音をあえて際立たせた