キネマクロラ

家をめぐる3つの物語のキネマクロラのネタバレレビュー・内容・結末

家をめぐる3つの物語(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

家に篭って映画ばかり観てる自分みたいな人間には毒(良薬?)になりそうなオムニバス。

ストップモーションってEテレの影響なのかほのぼの素材的な印象を持ってる人が多いように思うけど個人的にはある種の不気味さをいつも感じる。この作品はそっちに全振りした感じ。話もダークだし、完全に大人向けで、考察しないと消化できない不親切設計。そういうのが好きな人だけ観てね、というニッチなニーズ(誰得?)を狙った作品なのかも。

1話目は過去、2話目は現代、3話目は未来と時代が変わるのはついていけるが、登場人物が人、鼠、猫と世界観が変わるのはやや戸惑う。ひとまず猫好きなので3話目だけレビューします。

「犬は人に付き、猫は家に付く」と云われるぐらい猫はお気に入りの場所から離れない生き物。かと思えば突然自由気ままにフラッといなくなったりもする。猫は本来、自由気ままな生き物なのだと思う。
最初は「まともな大家vsどうしようもない住人」という構図だと思って観てたけど、段々と「一人だけ状況が見えてない大家」を「最後まで見捨てずに救おうとする友人」の話であることが分かる。「自分の見方次第で世界は変わる」という事を視聴者自身に追体験させる仕掛けが面白い。
伏線は色々ある。家賃を払うとそれは補修費になってますます大家を家に執着させてしまう。それが分かりきっているので住人は家賃を払わない。代わりに本当に必要なモノ(食べ物とか)を渡す。床板で作られた小舟も、家が新天地を目指すための手段にもなりうることを暗に示している。いくら貼っても壁紙が剥がれてしまうのはそもそも補修自体が意味のない行為だから。
本当に心ある友人の助言は時として受け入れがたい。でも勇気を持って自分のエゴと向き合ったその先に希望がある。(ま、捨てたハズの執着までついて来ちゃった、と捉えると軽くホラーだけど😅)

この3話目があるから救われる。
なんてことを思いながら半ばコタツと一体化している自分もいずれ家の一部になってしまうのだろう。🥲