海老シュウマイ

破戒の海老シュウマイのレビュー・感想・評価

破戒(2022年製作の映画)
3.0
「差別をしてはいけない」という禁止則でしか語られない、捉えられないというのはかなり問題で、根本から演繹的に積み重ねていった結論として「よくない」にならないと。

どんな時代でもどんな状況でも、どんな人であれ、どこまで行っても人として等しいってのがスタートラインでしょうが!(金八風に)

というか単にオマエはオマエ、オレはオレとして同価値ってだけで、出自とか知らんがな。


もちろん、「寝た子を起こすな」論の欺瞞性には辟易とするので、負の歴史も受け止めないと。
そういう意味ではこのタイミングで作品が作られたことや、この軽〜い感じの一般向けチューニングもアリだった気はする。手軽にNetflixで観ることができるのも素晴らしいと思う。

チューニングといえば、告白シーンで土下座じゃなく金八風のお説教授業に改変されていることも当時、土下座は批判されたんでしたよね、確か。

それよりも問題なのは、差別の構造的なところには一切触れず、個人の「お気持ち」の話になっている点で、ここはちゃんと批判されるべき。いわゆる「考えさせる風」の映画と同じ。
当時、体制維持のためにガス抜き役、最下層としてスケープゴートにされていた点や、その日々の暮らしをちゃんと描いていない点は物足りなさすぎる。

とはいえ、原作からしてその問題提起をすることが目的ではなく、メインテーマは隠して生きること、その告白という点だった以上、不足してしまうのは当然で、とすると、この原作ではなく、新しくお話を作ったほうが良かったんじゃないかという気もする。

そして、なんだかんだで石井杏奈の役は旧士族っていうお嬢様に設定していたり、島崎藤村がキリスト教の洗礼を受けた後、教員となり教え子のJKにマジ恋してしまい、自責の念から辞職して故郷に逃げ帰るピュアボーイな一面や、その後、姪っ子を妊娠させてフランスに逃げるクズ男な面など、

「差別はよくない」の話の原作としてどれだけ親和性があるのか、朝まで飲みながら確かめてやりたい。説教もしてやりたい。

高名な文豪を捕まえて説教してやるとは、お前は何様なんだ?と言われても、
いいんだよ、人としては同価値なんだから。

あと現代的にチューニングするなら、石井杏奈を「守られる」人物像ではなくて、住職に飛び蹴りをしてから寺を飛び出すとか、差別主義者を一喝するとかさせて欲しかった。
観たいよね、そんな石井杏奈。