KnightsofOdessa

無情のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

無情(2019年製作の映画)
2.5
[Once Upon a Time in the East...] 50点

アメリカ西部の開拓史から誕生したのが西部劇ならば、東欧で誕生するのは東部劇と呼ぶのが正しいのだろうか。舞台となるのはディストピア化した現代のワルシャワであり、そこは中世アルバニア高地にあった血で血を拭う名誉律"カヌン"に支配されている。高級住宅街をライフルを持って闊歩していても特に問題はないが、やはりある程度認められているとはいえ殺人がバレることはご法度のようだ。そんな世界で、コワルスキ家とノヴァク家(ポーランドではよくある名字)は長年争い続けている。冒頭で登場するのはノヴァク家長男の森の中で追い詰めるコワルスキ家長女クララの姿である。これに対してノヴァク家は殺人のお返しに殺人を返さねばならないが、復讐を一任されたノヴァク家の長女エヴァはそれを拒絶してクララを助ける。ここ数年のポーランドは悪しき伝統を踏襲した社会に戻りつつあり、伝統的家族像に反抗するという意味で作り出された寓話的世界である。

世界観や風景の奇妙さはヨルゴス・ランティモスを思い出すが、彼に比べると世界観導入にぎこちなさを感じてしまう上に、現実世界とのリンクに忙しすぎて設定がおざなりになっている部分もしばしば。ちょっと力みすぎている感じは否めない。
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