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別れる決心のタキのネタバレレビュー・内容・結末

別れる決心(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

私にとっては「オールドボーイ」視聴後の疲労困憊を思うとパク・チャヌク作品はけっこうハードルが高い、とずっと思っていた。久々にチャレンジしてみたらミステリとしてもかなり面白いし、禁断の恋もこういう描き方なら生理的な部分で精神を殴られずに愛について深く思いを巡らせられる。監督のインタビューにも今回は性愛のドギツい描写は必要ないし、そういうものをみせると視聴後にその印象しか残らないので敢えて過剰なエログロは控えたようなことが書いてあった。
タンウェイ演じるソレの定型ファムファタールが生真面目刑事にブチ当るとメロドラマ風なのにそれだけにとどまらない奇妙な可笑しみが生まれる。ヘジュンの中にある確固とした境界線が(相棒の若い刑事のような)一般の感覚とブレがあって面白い。主観と客観が入り混じる映像が変態チックに華をそえている。双眼鏡で目があったとかトチ狂ったオタクみたいでけっこう好きだった。生真面目刑事ヘジュンはソレが夫を殺したという決定的な証拠を隠蔽することで刑事としての誇りが「崩壊」しひとつの事件がおわる。
舞台は山から海辺の町へと移るが、またソレの夫が殺されるという事件が発生する。ほどなく犯人は捕まるが悪女だと思われたソレの真実が明かされる。女の永遠の愛は海の底に沈み男はそれを探すも海辺を彷徨うしかない。ソレの色香に迷いさっさとSEXして妻に浮気がバレて別れた方がどれだけ良かっただろうかというあと引くラストシーン。翻弄されてボロボロになっているパク・ヘイルの様子が妙に似合っているので悲壮感とか可哀想感があまりないのがいい。複雑に色を変えるがどの色も真実に見えるタンウェイの演技力が光っている。



パク・チャヌク監督のインタビューからヘジュンが頻繁に目薬をさす意味、ソレの洋服の色や部屋の壁紙、ヘジュンやソレの人物造形などの解説があるので是非↓

【インタビュー】ファム・ファタールと言われるハードルを越えたい、『別れる決心』パク・チャヌク監督 https://www.cinemacafe.net/article/2023/02/17/83584.html

映画『別れる決心』パク・チャヌク監督インタビュー。禁断の「愛」を通して描いた「コミュニケーションの不可能性」 https://ginzamag.com/categories/interview/320336

【「別れる決心」インタビュー】パク・チャヌク監督、新境地へ “刑事&容疑者のロマンス”をアップデートした仕掛けとは? https://eiga.com/news/20230214/4/

眼差しと、ため息。パク・チャヌクが『別れる決心』でたどり着いた“ニュアンス”の美学【宇野維正の「映画のことは監督に訊け」】 https://moviewalker.jp/news/article/1122398/

パク・チャヌク監督最新作!『別れる決心』タン・ウェイ インタビュー
https://screenonline.jp/_ct/17609391

『別れる決心』パク・チャヌクが語る、複雑な女性像にかける思い。目指すのはステレオタイプからの脱却 https://www.cinra.net/article/202302-ParkChanwook_iwmkrcl

映画監督パク・チャヌク インタビュー「これまでの作品の延長線上に『別れる決心』はある」
https://numero.jp/interview370/
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