あまんだ

聖地には蜘蛛が巣を張るのあまんだのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.5
まず、冒頭、聖地で起こっている娼婦連続殺人事件の取材女性ジャーナリストが1人で宿泊しようとした時に、事前予約しているにも関わらず、宿泊拒否をされた所から、この国の女性蔑視の度合いを臭わせてくる。
犯人は、神の名の元に娼婦殺害を繰り返す普通の中年男性。犯行の手口も杜撰で、目撃証言もわさわさあるにも関わらず、連続殺人は止むことがない。
明らかに真剣に捜査している節を感じられない警察。その割には、事件を調査する女性ジャーナリストが、宿泊するホテルの部屋にわざわざ来てまでセクハラする。きっしょいわー。ちゃんと仕事せえよ。
女性ジャーナリストが次第に犯人に肉薄していく様と、犯行を繰り返す犯人の日常が交互に描かれ、見れば見るほど、犯人の中年男性の普通さが浮き彫りになり、この国では、普通の男性がナチュラルに息を吸うように女性蔑視している様を浮き彫りにしていく。
とうとう捕まってからも、国を挙げて、犯人を英雄視する国民達に寒気がする。減刑の嘆願書止まぬ様に、絶望的な気分になる。
そこには、女性が女性を蔑む様も含まれている。
生まれたときから、そのような教育を受け、様々な選択肢を奪われている、もしくは考える事を放棄している女性。ある意味、女性であるが為に、ずっと虐待されているとも言える。娼婦達の姿は、明日は我が身と言う事にも気付いていない。
男性も、男性は男性らしくと言う教えの元に、圧迫されている節もあるが、ただ男性であると言うだけの謎の選民意識を持ってしまったり、
人間としては、どちらも歪みが目立つ。
ラストは、そのような環境の恐ろしき輪廻の様な映像で締め括られ、この国の希望が閉ざされている事を描いている。
絶望感に満ちた映画ではあるが、程度の差はあれ、そこかしこに満ち満ちている世界の歪みの縮図であるとも言え、現在起こっている大物芸人性加害問題にも言えるなーと、時勢にマッチした映画であった。
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