幽斎

イコライザー THE FINALの幽斎のレビュー・感想・評価

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.0
恒例のシリーズ時系列
1985年~1989年 4.0 The Equalizer オリジナルTVシリーズ
2014年 4.2 The Equalizer 初の映画化
2018年 3.8 The Equalizer 2 映画版の続編
2021年 3.6 The Equalizer ドラマのリメイク、Queen Latifah主演
2023年 4.0 The Equalizer 3 本作

オスカー俳優Denzel Washingtonが、元凄腕エージェントを演じる大ヒット・シリーズ第3弾。今回の舞台はイタリアで描く、ヴィジランテ・スリラー。MOVIX京都で鑑賞。

元ネタは全米で放送されたTVシリーズ「The Equalizer」。ドラマでは新聞広告を見て助けを求める相談者の為に、諜報員の能力を使い事件を解決。アメリカでは「Vigilante」日本では自警団と訳されるジャンルで、法に依らず私的制裁を加える、が正しい。父親に依れば元ネタは「ザ・シークレット・ハンター」と言うタイトルで、京都ではABC朝日放送で1年ヤッてたかな?らしい。本作のクレジットの字体も元ネタと同じ。

原案Michael Sloanはテレビ界の大物で私のジャンルで言えば「刑事コロンボ/魔術師の幻想」。他にも「宇宙空母ギャラクティカ/サイロン・アタック」「0011ナポレオン・ソロ2」「バイオニック・ジェミー スペシャル/蘇った地上最強の美女」「帰ってきた警部マクロード」等、父親も「全部同じ人かよ」と驚く位、人気ドラマを手掛けたレジェンド。元ネタを演じたEdward Woodwardは、此のドラマでゴールデングローブ主演男優賞。

権利をソニー・ピクチャーズが買い取り映画化を模索。当初はソニー繋がりで「007 カジノ・ロワイヤル」Paul Haggis監督、主演をオスカー俳優Russell Croweが演じるプランが浮上したが、此の頃から素行不良が目立つCroweと「ザ・シークレット・ハンター」イメージが合わず、品行方正な人物を望む噂を聞いたDenzelが「よし、俺が一つ」と名乗りを上げ、監督もオスカー俳優に導いた「トレーニング・デイ」Antoine Fuquaを推薦。

マッコールは、元海兵隊員でDIAの特殊工作員だが、日本だけは元CIAで押し通すつもりらしい(笑)。Melissa Leo演じる元同僚もDIAハイクラス相談役。アメリカのIntelligence Communityは17有り、DIAは国防総省の情報機関。アクションよりインテリジェンスが主体で、世界最高の特殊部隊ロシアのスペツナズと対峙する事は無い。Melissa Leoは元ネタ「ザ・シークレット・ハンター」にも出演。イコライザーの意味は平等なる粛清。

マッコールの黒い服装は妻を亡くした喪に服する孤独。国家の陰謀を阻止するスーパーヒーローでは無く、レビュー済Sylvester Stallone主演「サマリタン」の様に自分のテリトリーの安寧の為だけに戦う。自宅の在るボストンから遠く離れたイタリア。図らずもコミュニティに属する事で骨を埋めても良いと考えを改める。「裏テーマ」を理解せず低評価を付ける人は、お前の目は節穴かとマッコールに一喝されるだろう。

葡萄園を瞬殺する展開はDenzelがエージェントではなく「死神」、人では無いんじゃないか?的に強く、私は劇場で「コレならハロウィンのマイケル・マイヤーズに勝てる!」と笑い乍ら観てた。「96時間」の様に、いつも家族が誘拐されるアホ・シリーズと同じで今回も「場所が変わっただけ」かも知れないが、オスカー俳優の演技力こそ「ターミネーター」をモジってナメテーター。舐めてた相手がマジヤバい(笑)。

Dakota Fanning、もう29歳なのか、まだ29歳なのか、Denzelと「マイ・ボディガード」2004年作品で共演。多くの候補が名乗りを上げたが、Melissa Leoと似てる点も大事だが、当時10歳の彼女を護衛する話が本作とマルチバースで繋がる雰囲気も都合よく、孫娘と御爺さんの様なアットホームな面白さも醸し出す。彼女のシーンが少ないのは編集の都合らしい(109分と最近の映画では短め)、前作の続きでLyft(アメリカの白タク)だった乗客の老夫婦の姿を見て、Fanningが他人を助ける意義を知る意味は深い。

マッコールと同じ立ち位置なのは同じソニー「スパイダーマン」かな、見た事無いけど(笑)。ピーター・パーカーは自分の事を「親愛なる隣人」と言うらしいが、マッコールは1作目で「Concerned Citizen」憂慮する市民。本作の「裏テーマ」はイタリアが舞台と言うより、キリストがモチーフなのでシチリア。私はEXクリスチャンですが後半に登場するお祭りは、守護聖人の祝日の祭礼。私は京都人ですが、京都のお地蔵さま的にイタリアの街にも守護聖人が沢山居る。ソレをマッコールと対比する事で守り神としての意味を重ねる。

DenzelとFanningが教会で話すシーンは「マグダラのマリア」アトラーニの守護聖人のMaddalena。フランスではMadeleine、お菓子の語源でも有る。新約聖書の一説に登場する人物で、多くの浮名を流した罪深き女だが、キリストと出会い改心して聖女に成った。Fanningのその後ともリンクするが、フレスコ画を見てDenzelは「奇跡を信じない」と言うが、奇跡を信じる様ではエージェントは務まらない(笑)、奇跡を起こした聖母を見てキリスト、つまりイタリアでは聖人の条件に「奇跡」が必要と説く。住民を味方に付け、マフィアを追い払った奇跡の聖人こそマッコールなのだ。

興行成績ではシリーズ最大のヒットを記録したがDenzel自身は終わったと言うが、アメリカ以外の国では日本も含め「THE FINAL」と付けられた原題は「The Equalizer 3」なので、監督から声が掛かれば「次も有るかも」含みを持たせた。監督も前日譜や続編をソニーと協議してるので、だったら前日譜はDenzelの息子でレビュー済「TENET テネット」John David Washingtonで創ろうぜ!(笑)。Fanningを主役にするスピンオフとか、違うユニバースも有りそうなので、座布団を敷いて気長にお待ちしてます。

死神か、聖人か?「お前はもう死んでいる」此れほど相応しい台詞の作品も中々無い(笑)。
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