悠

Pearl パールの悠のレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.4
前作『X』で殺人鬼として登場した性の悦びおばあちゃんパールの若かりし頃を描いた前日譚。
前作は正直全くハマりませんでしたが、今作は普通に楽しむことができました。1918年が舞台になっており、音楽やトラジション、フォントなどがサイレント映画時代のアメリカ映画を意識した作りになっていて、古いアメリカ映画が好きな私にとってはメルヘンな色彩も相まってとても好みの雰囲気でした。
本作は厳格な母親に抑圧されて育てられてきたパールが夢と自己愛の狭間で葛藤する様が赤裸々に描かれていて、ホラーというよりもヒューマンドラマ的な側面で評価したい作品です。多くの人は人生で何かにチャレンジして大なり小なりの挫折を経験し内面的にも成長していきますが、パールの様に何かにチャレンジすることすら許されないようなあまりにも封建的な家庭環境で育つと、自分の心が脅かされた時の対処法もわからずに自己愛が歪んでしまうのも致し方ないなと同情してしまいました。感情の捌け口がわからず箍が外れた行動に出るところはある意味とてもピュアで人間らしい殺人鬼だと思います。クライマックスのパールの長い独白は本作がホラー映画であることを忘れてしまうぐらい身近な話でうんうんわかるーと聴き入ってしまいました。でもまさかこの思考回路のままババアまで成長するとはなww
ミア・ゴスの凄まじい形相で迎えるエンディングは見ものです。
悠