悠

ロバート・アルトマンのイメージズの悠のレビュー・感想・評価

3.3
精神を病んだ作家の女性が、静養のために夫と移住した先の別荘で狂っていくサイコスリラー。
主観的な視点で彼女の精神世界を表現しているためかなりホラー寄りの作品です。音やカメラワークを用いた小細工を弄さないナマの狂気の表現がとても巧みで、常に不安が付き纏う様な湿った雰囲気が好みでした。スザンナ・ヨークというメンヘラ適正120%のキャスティングも素晴らしいです。
今で言うところの統合失調症や解離性障害にあたるような症状に苦しめられていく主人公ですが、大昔この類の女性の精神症状はヒステリーと一括りに呼ばれ、子宮の病だの骨盤の鬱血が原因だの魔女の証拠だのと女性性を強く意識する少し差別的なニュアンスを含んだものでした。しかし本作はあえてそのヒステリーという古い呼称を用いた方が適切なほどに女性的な狂気で満ちていて、男性への欲求不満と拒絶というアンビバレンスが見え隠れする様にはどうしてもポランスキーの『反撥』を連想させられます。アルトマンの『三人の女』もそうでしたが、正当性は別としてよくオッサン達がこういう女性の内面に踏み込んだ様な作品を撮れるなと感心しました。アルトマンとポランスキーはおにゃのこ説提唱したいです。
悠