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美と殺戮のすべてのsnatchのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
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このドキュメンタリーで迫る人間の脆さ強さ

アメリカで流通している鎮痛薬で巨万の富を儲けた製薬会社サックラー家。著名な写真家ナン・ゴールディンは、この薬の薬害を経験しその危険性と中毒死を様々なアクションで被害者と共に訴える
彼女たちは、この一族が有名美術館に寄付し一族の名を冠した展示室への抗議を続け、彼女の作品を展示したこともある各国の美術館がようやく重い腰を上げていく。決まりきった慣例を人々の力で正しい方向へと動かせるんだと私達は目撃する事が出来る、と同時にこの行動力を作ってきた彼女という人間を分解させていく

70年代からのアート ゲイ ドラッグカルチャーシーンを作ったピュアでハードな人物。愛し合った恋人からのDVもあった。80年代は友人たちがエイズに罹り孤独の中、死んでいく
エイズに関しては私も当時は無知で遠巻きに見ていた。知ろうともしなかった

そして、両親と娘達の間にあった解けない編み目のような壁
たった14歳の姉が遺していったコットランドの「闇の奥」の言葉
「人生とはおかしなもので、無益な目的、無慈悲な必然性に基づいている。自分のことを深く知り得たとしても、たいていのことは手遅れで悔やみきれない後悔が残るだけだ。自分というものをやっと理解できても、もう何もかもが遅い」

この言葉は一体…と何度も何度もこの言葉を反復する
胸を衝く悲しすぎる言葉だと思う

確かに現に世の中なんてそうかもしれない
でもこの言葉をナン・ゴールディンは消していきたかった。そんな人生だった
彼女は両親とは違い、人に対して慈悲深くあろうとし行動してきた
自分というものを理解しようとし裸の自分を表現して、差別や偏見の中、死に向かう人のそばにいてあげること思い遣ることを体現してきた人だった
今はお婆ちゃまとなった初対面のナン・ゴールディンさん、心に刻まれました
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