びーち

彼岸花 ニューデジタルリマスターのびーちのレビュー・感想・評価

3.9
娘の幸せを願い嫁ぎ先を世話しようとする親と、恋愛相手との結婚を望む娘との相克を描いたコメディ。高度成長期の初老の夫婦にとって、最大のテーマは「子供の結婚」だったのだ。老後の不安がそこには微塵もない。なんと幸福な時代だったのだろう。大企業の重役である父親平山に扮した佐分利信の無骨で不器用な愛情表現がなんとも微笑ましい。また、やや娘よりの立場の母親役を演じる田中絹代がとてもいい味を出している。アグファカラーによって発せられる様々な赤のアイテムの中で、娘役有馬稲子の口紅の赤が一層際立っていた。彼岸花の花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」。そのすべてがこの物語に見て取れた。
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