おりちゃん

福田村事件のおりちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

福田村事件(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます


何か面白い映画ないかなーとFilmarksを開いたら、上の方に表示されていた&高評価&実話に基づいた事件という内容に惹かれて鑑賞。

有名な俳優が多い中上映している映画館が50館弱という少なさに驚いた。
そのため、上映時間も、朝か、夜という極端な時間しかなかった。
そんな条件の中、早朝に鑑賞。
定員約100名の中、40名はいたと思う。


135分という長尺だったが、終わってみたらあっという間に感じた。
おそらくメインの部分は後半30分ぐらいになる。
だが、そこに至るまでの人間物語が丁寧に描かれており、邦画らしさを感じた。
監督がドキュメンタリー監督の方と知ると納得できる部分がある。


映画の感想として、多勢に無勢、無知は恥、正義中毒、現代に通ずる部分が多数あった。
100年前の関東大震災から、5日後にこの悲惨な事件が起きた。
当時の唯一の情報元である新聞は朝鮮人が暴行、襲う等、ただでさえ震災で混乱している中に、不安を煽り、噂が噂を呼び、遠征している旦那が朝鮮人に殺されたかもしれない、と福田村の人々は不安な日々を過ごしていたに違いない。


いろんな条件が揃う中で、集団心理の恐ろしさを痛感した。
正義中毒により、この村を守らなければ行けない、という心理が、集団になったら、こんなに恐ろしいものだと。
冷静な人間がいる中でも、その数が少なければ、多い人間の方がどうしても圧倒してしまう。


現代のSNSでもそうだ。
誰かが、あいつを悪だと言えば、そーだそーだ!と乗る人もいる。ただ、実際に自分で考え疑い、意見をする人間はどれだけいるのだろうか。
悪だから排除しなければならない。
◯◯さんが、悪だと言ったから、という理由で悪だと決めつけている場合もないのだろうか?


今はSNSで、いろんな情報・意見が飛び交う。
そんな今だからこそ、私は自分の目で見て、自分の耳で聞いて、考えて、"自分"がどうしたいか、言える・行動できる人間でありたいと、考えさせられた。
ただ、恐怖の淵に立たされたら、そんな冷静な判断ができる人間でいつづけられるのだろうか、という不安もある。


この事件については映画を観るまで存じませんでした。
1人でも多くの人に今だからこそ知ってほしい。
ただ、あまり本など、当時の出来事についてのものが何も残っておらず、どうしてあの事件が起こってしまったのかは正確には記録されていないため、この映画は"事実に基づいたフィクション"、と伝える方が正しいだろう。
一人でも多くの人が、私と同じように日本でもこういう事件があったと知ったきっかけになると良い。


パンフレットを買ったが、最後に脚本全て載っていたので、ぜひ映画を観て、関心を持った人にはオススメします。映画には描かれていないシーンや、井浦さんの朝鮮語の訳も書かれていました。
あまりにも酷すぎる誘い文句の為、あえて字幕はつけなかったのも納得です。
※この夫婦に関しては完全にフィクションの登場人物なので、混合しないように。
ただ監督などのインタビューは政府批判や思想が濃過ぎる為、パンフレットは鑑賞後に読むのがオススメ。

この映画は完全なる悪が存在しない。それでも争いが起きてしまう、そして昔から今も人間は繰り返している。
おりちゃん

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