natsume

福田村事件のnatsumeのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.2
事件からちょうど100年と1日経った日に鑑賞。特にイベントない日の朝イチで行列でてきてて驚いた。パンフは売り切れ。テレビとかでやったのかな?と思ったけどそういう訳でもなかったらしい。口コミであの行列はすごいなぁ。

マスコミ関係者には入社式で見せた方がいいと思った。X(旧Twitter)に入り浸っている陰謀論者にも見せたいけど、こんなに混んでてもそういう層にはリーチしないのが悲しいところ…でも文化庁が金出してるのは救いと言えるか。

いま首都直下型が起きたら、規模は違えど似たような事件が起きる気がする。東日本大震災の時期よりも日本人の情報リテラシーは劣化していて、フェイクニュースも巧妙になっていて、似たような思想の人ばかりが群れる世の中になっちゃってるから。保守派の差別と偏見も強くなってるし。

「蝿の王」というディストピアSFが好きなんだけど、パニック時に人間がどう振る舞うか、小説でも映画でもいいので擬似体験しておくことで、いざというとき少しでも立ち止まれるんじゃないか、と思う反面、集団が一気に動き出したときに自分が一人で抗える自信なんかなくて、やっぱ怖いなぁと思う。緊急時の自分の判断に自信を持ってる奴の方が総じてヤバいので、それよりマシだ、と思うようにしてるけど。

かなりズバリのシーンもあるが、塚本晋也の野火のような脳を抉る感じの怖さはないので、中高生でも注釈付きで見られるし、可能であれば義務教育期間とかの、SNSの見過ぎでバカな大人になる前の時期に見た方がよいと思う。これでもおそらく実態よりはかなりマイルドに脚色・演出されていると思った。

ドキュメンタリー畑の監督のドラマ映画デビューだそうで、事件以外の「田舎のムラ」のそこはかとない地獄感が丁寧に描かれていたところも良かったと思う。柄本明のくだりとか本編とは直接関係ないエピソードが着実に積み重なって、一気に溢れる瞬間が訪れるまでの脚本には説得力があった。

あと、井浦新、永山瑛太、東出昌大というモデルから化けた系の名優一度に見られるのはそれだけでも美味しいです。東出昌大、子どもの親としては最悪なんだけど、とにかく役者としてはいいんだよなぁ…
natsume

natsume