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瞳をとじてのnatsumeのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
2.7
ビクトル・エリセ31年ぶりの長編新作。私のような80年代のオリーブ少女にとって、「ミツバチのささやき」のアナ・トレントの白いコートは、ヨーロッパ的なものへの憧れと、永遠の少女のアイコンへの倒錯的な趣味の感覚が入り混じった独特の思い出の品なんだけど、美しく成長し57歳になったアナ・トレントに、再び「私はアナよ」と言わせるビクトル・エリセはまぁまぁ頭おかしいなと思いました。映画業界のマラルメって感じ。一生をかけて1編の映画を撮っているようなものだ。

31年前の長編「マルメロの陽光」は私の中では永遠のベストで繰り返し観ても決して飽きないのだけど、それには劣る。老いと喪失と諦めきれない回復の物語なので、もう少し歳をとってから観たらもう少し共感できるのかもしれない。今はちょっと、この抵抗がやだなと思ってしまった。次はまた10年後なのかなぁ。映画撮ってない時間の方が撮ってた時間より多い人だと思うけど間違いなく映画史に名を刻む人だし、ガツガツ商業映画とってる監督からしたらどんな風に見えるのかなーとかも思ったり。

でもマラルメは教師ではなく詩人と呼ばれるし、なんかもうそういうことなんだろうなと思う。褒めてるんだかなんだかわからなくなってきましたが、特別な存在だなと思ってます。
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