タキ

フェイブルマンズのタキのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.2
スピルバーグの半生を描いた映画かと思いきや彼がプロの現場で監督と呼ばれるずっと以前のお話。
父親は優秀なエンジニアでステップアップのために家族を連れて2度引っ越しをするのだが、2度目の引っ越しではユダヤ人が少ない地域の高校に入学することになり、ひどいいじめを受けたり、母親はある事情で引っ越し後に精神的にかなり不安定になり、結局両親は離婚してしまう。こう書くとなかなかハードな青春時代のようだが、スピルバーグの両親への愛がヒシヒシと伝わってくるなんともいえない温かさがある。世界でもっとも有名な映画監督になる片鱗は初めて映画を見た時からあり、妹たちやボーイスカウトの仲間たちを出演させて映画を撮っているシーンはすごく楽しそう。人種差別のいじめを受けていた高校でも卒業記念のパーティで流すドキュメンタリー映画を制作することになるのだが、この時のエピソードがかなり変わっている。すごく嫌な思いをしたというのにいじめっ子をヒーロー仕立てにして編集していたのだ。この映画を見た当人が血相を変えてやってきて「2度とするな!」と泣きそうな顔でサミー(スピルバーグを投影した主人公)に詰めよる。ドキュメンタリーなのに本当の自分ではないものを勝手に作られたショックなのかなぁマッチョのバカなのにやけにセンシティブ…と不思議がってたら映画におけるプロパガンダの力をこの時に認識したのでは、という解説を聞いてなるほどなと思った。スピルバーグって内面はかなりヤバイ人なのかもしれない。
あの奇妙なおじさんの呪いのような言葉を思い出す。

『お前は映画を撮り続ける。
だが痛みを伴うぞ。
忘れるな。
芸術は輝く栄冠をもたらす。だがー
一方で胸を裂き孤独をもたらす。
家族の“黒い羊”
砂漠を彷徨う放浪者になる
芸術はお前の頭を食いちぎるライオンの口だ。』

芸術の大海を渡るには並々ならぬメンタルが必要だ。やっぱりスピルバーグはヤバイ人に違いない。

この映画は実話なのか…!?映画「フェイブルマンズ」徹底解説!(後編)町山&藤谷のアメTube
https://youtu.be/nbtVz1uxrH0?si=H5xRVnLJiGSJtvmt
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