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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版の電池のレビュー・感想・評価

3.5
前に早稲田松竹で『リンダリンダリンダ』を観たときに流れた予告で一目惚れして観にきたけど、間違いなかった。予告で一目惚れした映画はいい映画説は立証されますね。エドワードヤンの映画は初めて観たし、何かとっつきにくい印象があって、観なかったのだけど、これは現代の都市の映画だから観たいなと思った。1994年の台湾が舞台だけど、映画の冒頭でこの20年で豊かな国になったと言うように、豊かな都市の人々の生活が描かれる。基本的に僕は都市や街で描かれる人間模様にしか興味がない。というか、映像的に自然とか昔の時代を描いたものに興味が湧かない。この映画は都市の映画でありながら、題材は恋愛や仕事の人間関係、かつ若者の群像劇で好きなものが詰まっていて全く飽きなかった。予告にコメントを寄せていた濱口竜介の映画のように、とにかく電話や食事の場でそれぞれ喋りまくるとこが好きだし、人に誠実さばかりを求めてしまい拗れる関係は、まさに『ハッピーアワー』に影響を与えてると思う。干された靴下を放り投げながら怒るシーンとか好きな場面も多いけど、何よりラストのエレベーターの中で別れ話をする2人が、また何かあれば連絡しよう、コーヒーでも飲みに行こうと、前に向きに別れて彼女はエレベーターから出て、男は残されて扉は閉まり上の階へ行こうとするけど、やっぱと思って「開」のボタンを押したら、彼女がそこにた立っていて、「コーヒーでも飲みに行く」と言われて抱きしめて終わってピアノ曲のエンドロール。エンドロール中に打ちのめされられる。余韻に浸って立てなくなるとはこういうこと。こんなに映画を観て心がきゅうううっとなるなんて、そんな気持ちにさせられるいい映画を久々に観た気がした。
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