すずきじみい

理想郷のすずきじみいのネタバレレビュー・内容・結末

理想郷(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

監督: ロドリゴ・ソロゴイェン
脚本: イザベラ・ペーニャ
   ロドリゴ・ソロゴイェン


原題は『The Beasts』
人間のbeastな部分を厭になるように嫌らしく描いてる。

暴力や脅しで主人公夫婦を虐める田舎民兄弟もbeastsだけど、
田舎を忌みながらもそこでしか暮らせない人々に、都会から移住してきたインテリ金持ちの自分が、「ここは故郷です」なんて言ったら、彼らの神経を逆撫でするって事に気づかない主人公も愚か。

主人公の妻が、汚い意地悪を繰り返す田舎民兄弟の事を、
「彼らは失う物がない」
って言うの、妻は彼らの不幸に十分気がついてたけど、主人公は分かってなかったんじゃないだろうか?
後半は、前半のbeasts達の醜い争いと打って変わって、妻の忍耐力、賢さ、孤独な戦いから逃げない強さが描かれて、目が洗われた様な気になった。
あの後犯人が捕まって罪に問われた後も、妻は哀しみの土地で、夫と目指した理想郷を思って、一人で暮らしていく様な気がする。
誰よりも妻が一番強くて執念深いのでは?
と感じた。

本作の元になった実話をネットで見たら、
事件が起きたのは、本作で描かれてる様な田舎の人の貧乏や都会との格差から生まれた都会出身インテリへの憎しみが動機ではなく
(移住者夫婦と歪みあった兄弟一家は知り合って10年くらいは相手を食事に招く程良好な関係だったそうだ)
山の所有権を巡っての争いが発展して起きた物で、本作とはかけ離れた内容だった。

なので、作中、語られる
「ロレンソ(弟)は臭いから町の売春宿に行っても、女達に避けられる」等の、
田舎人ゆえの被差別や不幸は、リアルな事ではなくフィクションなんだろうと、可哀想と思って観てたから、がっかりした。

昨日まで仲良かった同士が山の所有権を巡って、beasts になるっていう実話にもっと近い話で映画化しても、同じ位面白いんじゃないかなと思った。