七沖

猿の惑星/キングダムの七沖のレビュー・感想・評価

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.7
〝人類よ、ひれ伏せ。〟
完全新作ということで、『猿の惑星』過去作を観ていなくても普通に入っていける内容だ。

猿の惑星という名前は聞いたことがあったけど、古いしシリーズもたくさんあって今から追いかけるのはツラい…という人にもオススメできる内容だと思う(とはいえシーザー3部作と初代は可能なら観ておいた方が拾えるネタが多くて楽しさが増すけど)。

駅で見かけた本作の広告で、「人類よ、まだ人間同士で争っているのか。」というキャッチコピーに思わずハッとした。前作にあたるシーザー三部作は、まさにこのコピーに真っ向から挑んだシリーズだった。今回の新作もそうなのか…と、今の時代を生きる人間の一人として、若干の居心地の悪さを覚えつつ劇場に足を運んだ。

結果としては……うーん、まあ普通かな…?
猿しかいないという、なかなか難しい時代設定のせいもあるが、盛り上がりどころが薄く感じた。
いや、ちゃんと主人公に感情移入できる出来事は起こるのだが、やはり猿同士のドラマが続くとちょっと飽きてしまう…というのが本音だ。
さらに、敵役のプロキシマス・シーザーがあんまり怖くないというのも残念なポイント。
もっと言うと、主人公も敵もみんな猿だと、本能に訴えかけてくる野生動物と生身で対峙したかような恐怖や緊張感は無い。どっちも猿だから。
この恐怖は、主人公が人間でないとなかなか伝わらない。

だからこそ、秘密を握る少女ノヴァの存在は、猿だらけの世界の中で非常に重要なわけだが、この作品単体として見ると何を考えているのかが最も分かりにくいキャラクターになってしまっている。
まぁ、猿から見たヒトなんてそんなものかもしれないが、これはちょっと勿体なかったように思う。
あくまで観客はヒトなのだから、彼女のバックグラウンドを理解して(または察することが出来て)応援できるだけで、この映画の楽しさは変わったのではないかと思う。
とはいえ、ノヴァを演じたフレイヤ・アーランの画面映えする存在感は魅力的。今後の活躍が気になる女優さんだ。

物語としては一応の決着を見せるが、続編を想定してそうなエンディングだ。
初代『猿の惑星』に繋がる要素も地味に出てくるので、もしかしたら初代の冒頭にリンクしていくシリーズになるのかもしれない。
シーザー三部作は個人的には名作だと思っているが、当時はぜんぜん興味が湧かず、全て劇場スルーしてしまった(激しく後悔している)。
だからこそ、新しい『猿の惑星』がどのような結末を辿るのか…それをリアルタイムで追えるのが楽しみだ。
七沖

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