小原ブラス

ゴジラ-1.0の小原ブラスのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.5
ゴジラがちゃんと生きていた!

2016年公開の「シン・ゴジラ」がだいぶ良かったので、前作と比べてしまうんだろうなあと期待値下げつつ劇場に行ったが、全然下げる必要がなかった。負けずとも劣らない、ベクトルの違う面白いゴジラだ。

シン・ゴジラは「無責任な現代政治」がテーマだったように思うが、今回のゴジラは「生きることへの執着」みたいなものがテーマだと感じた。戦後の「命を大切に」教育で価値観が変わりゆく日本。戦時中、生きることへ執着して特攻に失敗したことを恥じる敷島浩一が、生きる執着の何が悪いんだと目が覚めていく。そして生きる執着はゴジラも同じ。ゴジラが生きるか、人が生きるか。生きることへの執着がぶつかった時に生まれる狂気から怖さを描こうとしたのだろう。

時代設定もあってか、あの古き昭和のゴジラ映画感を節々に感じられた。ラジオから流れる国民保護サイレンとか、アナウンサーの喋り方とか...昔の映画を観ているのかと錯覚するほど。ラストのエンドが出た瞬間は「あーゴジラ観たわ」と満足。

何よりゴジラそのものが良かった。
造形がガッチリしていてかっこいいのに、動き方とか表情がなんとも言えない可愛さがあって憎めない。それに熱線を吐くシーンの憎悪に満ちた表情もいい。ゴジラってのは倒さなきゃならないんだけど、「倒してごめんよ」と、まるで家畜を屠殺するような愛情と罪悪感が湧かないといけないと思うのだが、今作ではそれがあった。(次作があるなら、もっとこの点を強調してほしい。)

【微妙な点】
・設定の作り込みが甘い?
>電車に乗ってたヒロインの大石がゴジラに襲われ、電車から水中に落ちる。なんとか這い上がったらなぜかすぐに銀座の中心にいて、またゴジラに襲われる。危機一髪のところへ丁度さっきまで自宅でラジオを聴いていた敷島が瞬間移動して駆けつける。←こんな感じで無理矢理繋げました感が所々に。

・キャラのセリフが臭すぎてちょっと冷める。ゴジラ倒した後皆で敬礼もちょっと笑っちゃう。演技もいちいち叫んでうるさい。(安藤サクラは良い。)

【その他】
ネタバレになるから書かないが、最後に生きていたことが分かった方、「いやあれ死んでないの無理あるやろ」と思ったが、首筋にあった不自然なアザに何かその答えがありそう。今回のゴジラは自己治癒力を持っていたが、ゴジラが核実験で放射能を浴びてその力を得たのであれば、そのゴジラから放たれた熱戦を浴びれば治癒能力が人にもうつるのではないだろうか。銀座でゴジラの後遺症を受けた人がその他にも沢山いそうだ。

この感じ、ゴジラ-2.0ありそう。
小原ブラス

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