幽斎

凍った湖の幽斎のレビュー・感想・評価

凍った湖(2015年製作の映画)
3.8
C級スリラー(ホラー)をレビューする、Scavengerシリーズ第13界。原題「Der Tote am Teich」池で死んだ男。タイトルとジャケ写が売る気ゼロで素っ気無いが、中身は別な意味でソッケ無いけど悪く無い。AmazonPrimeVideoで0円鑑賞。

本作はオーストリアのTVムービー「Landkrimi」番組枠で、日本で言えば火曜サスペンス劇場(世代では無いので未見)的なテイスト。オーストリアのミステリーと言えば国営放送ORFで高視聴率を記録した「お葬式から事件は始まる」有名。女性が主体として捜査するが、他のドイツ語圏のミステリーと同じく兎に角地味(笑)。しかし、ドイツの様な辛気臭さは無いので、北米でも割と多作が配信される。舞台と成るアッパーオーストリアは、景色は素晴らしいが、京都人が見てもド田舎、質素な暮らし振りも伺える。

北欧らしい寒村が事件現場、登場する人物も顰めっ面で一瞬、現代の話かなと錯覚する。オーストリアのミステリーの特徴は、20世紀以前を彷彿とさせる質素な暮らし振りが目立つ。不意に捜査でタブレットが登場すると今の話なんだと引き戻される。海外セールスを想定して、自国を良く見せるのが普通だが。製作年の2015年を考慮しても、コレで良いのかな?感は有る。

英米ミステリーの様に連続殺人に発展!、犯人がサークルチェンジする事は全くない。ドキュメンタリーでも見る様な、地に足の着いた地道な捜査が見せ場、スリリングな展開も無く、アッと驚くトリックも無い。殺害された遺体から「カーリングのストーン」が凶器、と言う点はオーストリアらしいが、特段に秀逸なメソッドも無い。

無い無い尽くしでは在るが、堅実で真面目な作品創りに好感が持てるし、事件が地味でも「なまはげ」登場とか、些細な点がオーストリアチックで嫌いに為れない。ドイツ語圏の国は警察の権力は絶対、逮捕令状なしに取り締まるのは、見てる間は気に為らないが、良く考えると矛盾だらけ。優越的地位を濫用するのは「村社会」の名残り。遺産相続のオチは駆け足で分り難いが、プロットに忠実な王道のミステリーと言える。

アメリカのテンプレ塗れの2時間サスペンスにウンザリ。日本の主役重視の2時間ドラマに飽き飽き。本作は人の描き方がリアルで実直で重厚なテイストは悪くない。残念なのはアマブラ定番の字幕の酷さ。留学生がバイトで翻訳したとしか思えない低レベル。0円だから文句も言えないが、ねぇ?(笑)。

本作には続編2018年「Der Tote im See」舞台は池から湖へ。更に最新作2022年「Zu neuen Ufern」今度は岸辺へ(笑)、人気シリーズらしい。調べると結構面白そうなプログラムも有るので、「Landkrimi」頭の片隅に入れても邪魔には為らない。

激シブ版オーストリア産ミステリー。映像の完成度は悪くないので、暇潰しに為るかも。
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