幽斎

シン・タイタニックの幽斎のレビュー・感想・評価

シン・タイタニック(2022年製作の映画)
3.6
恒例のシリーズ時系列
1997年 1.0 TITANIC オリジナル、死者多数でも愛と感動の物語
2010年 3.0 Titanic II 邦題「タイタニック2012」前作
2022年 3.6 Titanic 666 本作、又の名をTitanic Rises

映画「タイタニック」Filmarksで4以上を叩き出す感動の名作らしい。だが、私の生涯ワースト1位も「タイタニック」(笑)。制作したJames Cameronは「ターミネーター」権利を不倫騒動で失い、新たな構想「アバター」資金作りの為に確実に儲かる作品が喉から手が出るほど欲しい。タイタニックは映画史に残る大ヒットを記録、ソノ記録は「アバター」登場まで破られる事は無かった。友人宅で鑑賞。

本物のタイタニックは20世紀最大の海難事故で1500人以上が命を落とした。ソレを英国最高の詩人William Shakespeareの代表作「ロミオとジュリエット」強引にモンタージュして感動物語に仕立てた。乗員の遺族から名誉棄損で訴えられる等、決して綺麗事では済まない。作品に抱く言い知れぬ違和感に共感して頂ける方は少ないだろうが、最後の瞬間まで職務を遂行し亡くなった方に改めて哀悼の意を捧げたい。

映画の大ヒットで「タイタニック」神格化、2023年6月18日、タイタニック号の残骸探索ツアーの潜水艇タイタン号が消息を絶つ。参加費用1人3500万円と富裕層には安い冒険、タイタニックは観光地かもしれないが、人が亡くなった「墓標」である事はしっかり認識しないといけない。不幸な事故で多くの行方不明者の居る沈没船にノコノコ逝く金持ちの気持ちは私には分らない。「貴方の叫びは誰にも聞こえない」海は宇宙よりも怖い「だから呪われた」。本作は事故を予言したかの様な終末を迎えた、かも?(笑)。

他人の不幸は蜜の味とはよく言ったモノで、前作「Titanic II」沈没から100年後の2012年に再び豪華客船タイタニック2号が出航、だが巨大氷河が崩落し史上最大の津波に襲われる。まぁ、過去から学べよって話ですが、Titanic IIのタイトルもアサイラムだから赦された訳で、見ると普通のパニック映画だけど、間違えて借りた方も居たかも。更に10年経て続編が出るとは、アサイラム稼ぎ頭のサメ映画も流石にネタ切れ?。

「Titanic II」はDVDスルーですが、本作はプライムタイムに放送されたTVムービー。原題「Titanic 666」の666と言えばはオカルト・ホラーの最高傑作「オーメン」、流石に不謹慎と思ったか放送では「Titanic Rises」コッソリ変更。タイタニックの乗客が怨霊と化し3号の乗客を襲う中二病全開のアサイラム仕様。人の不幸でアカデミー作品賞とは権威の失墜にも程が有るが、興行優位なら2022年の作品賞は「エブエブ」ではなく「トップガン・マーベリック」だろう。船の番号が引き継がれるだけで、物語の繋がりは無い。

スリラー小説の世界では船とミステリーは相性抜群で数多くの傑作が有るが、映画も2002年「ゴーストシップ」Robert Zemeckisプロデュースで40年振りに姿を現わした豪華客船のサルベージを依頼されたクルーが恐怖に見舞われる等、幽霊船に纏わるホラーも多い。本作は「タイタニック」忌み嫌う者には「待ってました!」溜飲を下げる、アメリカにも同志が居ると大変心強い展開で気分爽快。Nick Lyon監督は、ソニー製作「2012」パチもん「2020」(原題Shockwave)制作した強者だけに、タイタニックの悲劇をCameronの様に商魂逞しく金儲けする連中、曾孫世代に復讐する至極真っ当な展開。アサイラムのCGも本作はヤル気MAX、客船のヴィジュアルも悪くない。

タイタニックの遺品を売り捌いて金儲けする輩と、タイタニックの名前で本作を創る製作者も同じ穴の狢と言う自己批判精神も感じる。人が死んでる事を美談に仕立てるCameron、そりゃあ怨霊も御怒りですわよ。Filmarksの上映時間が151分と有るが正しくは90分。ラストを絶望で終わらせたのは、遺族への配慮だろう。「シン」と言うから友人宅のソファで寝転んで見乍ら、スカベンジャー枠かなと思ったが、B級ホラーとして意外としっかりな創り。「タイタニック」大好きなら華麗にスルーして欲しいが、アサイラム基準のクソ映画の中では4.0に匹敵する、と言えば褒め過ぎか(笑)。

「タイタニック」クソ映画だと思う貴方は奮って乗船して欲しい、意外な掘り出しモノ。
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